青き空に浮かぶ白い雲 2
5年たった今になると、少しずつだけど、
不意に何かを思い出すときがある。
食べ物は何が好きだった、とか。
少しずつ、時間を取り戻しているような
気がする。
微かな記憶のカケラで、5年前に戻る。
その日は、雲ひとつ無い快晴だった。
私の家族と、愁の家族は仲が良かった。
だから、皆でどこか行こうとしていたんだ
と思う。
愁の家の大きな車に乗って。
私の父が運転して、愁の父親が助手席に乗って。
まだ小さかった私と愁は後ろでそれぞれの
母親の腕の中にいた。
母の腕の温かさを、少しだけ、思い出した。
思い出したのはそこまでだった。
どれだけの時間、何をしゃべっていたのか
何も覚えてはいない。
その瞬間の一秒前まで。記憶は真っ白だ。
そしてやってきた。
今でも覚えている、あの大きな衝撃。
その瞬間に全て見えるものの時間がスローに
なった。
私と愁は、母親の腕の間から、全てを見ていた。
衝撃で砕け散ったガラスの破片が、
キラキラと日の光に反射して光るのを。
母親の体が、窓から投げ出されるのを。
そして、雲ひとつ無い、青い空があったこと。
全てを見ていた。
そして、だんだんと
母の腕の温かさが消えていくのを、
感じた。
私と愁以外の人間の
明日からの毎日が
絶たれた瞬間を
見ていた。
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