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【ナイト・オン・ドラグーン】†15

[374]  ミルクボーイ  2006-11-12投稿

嫌味でも皮肉でもない、至極当たり前の言葉をかけられて、アインは微かな違和感を覚えた。が、
今は任務が先である。
「はっ帝国兵殲滅の報告を…」

「そう慌てるな。休む暇もなかったのであろう?ちょうど今し方、神水の塔からの清水が届いたところだ」

見るからに冷たそうな水の入った銅製の杯を受け取りながら、アインはますます面食らう。
ジークに労いの言葉をかけられるなどあり得ないはずだった。

「お前の義父オローも好きだった清水だ。まずは喉を潤すがよい」
言われるままに杯を飲み干す。
実際、よく冷えた水は喉に心地よかった。

「赤の他人でありながら、貴様とオローはよく似ている。ヘドが出そうなほどにな」

アインはまじまじとジークを見る。
悪罵に驚いたのではない。
今さら、そんなものには驚きはしない。
むしろ、労いの言葉こそが不自然なものであったと改めて気付く。
「父代わりというだけで、これほど似るとは。目障りでたまらぬわ」

何が言いたいのかと、詰め寄ろうとした時だった。
突然、
視界が揺れた。
握り締めていたはずの杯が転がり落ちる。

「もう効いてきたのか?弱いな。竜の子ともあろう者が」

ジークがあざ笑う。さっきの水には毒が入っていたのだ。

「この程度ならば、わざわざ余が手を下すまでもなかったか?いやいや、災いの芽は早々に摘んでおくに限る」
視界だけでなく、足元までもが大きく揺れる。
膝が折れた。
とっさに手をついて倒れそうになる上体を支える。が、それすらも危うい。

「オローは竜眼の男と対峙するまで持ちこたえたというのに。その息子はこの程度か?」
アインは必死で顔を上げた。
(竜眼の男?持ちこたえた?)
ジークがゆっくりと剣を抜くのが見える。
「まぁ、いずれにしても愚か者よ。差し出された杯を疑いもせずに飲み干すなど」
アインの義父オローが死んだのは三年前、封印の塔襲撃事件にはこんな裏があったのか。出陣しようとしていたオローにジークは毒の水を飲ませた。その結果、オローはまともに立っていられぬ状態で敵に襲われ、斬殺された…。
頭に血が上るのを感じた。全身を突き破るのではないかと思う程の怒り。
「……貴様!!」

アインの体が青白い光を放っていた。



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