闇に見い出す?
急いで家に帰ると、玄関で母が待っていた。
「今から病院行くからね。おじいちゃんの意識が失くなってしもうたんよ…」
太一は母と一緒に車に乗り込む。
「なぁ、様態はどうなん?おじいちゃん、死んでしまわへんやろな…?」
太一はたまらず母に訊いた。
彼はいわゆるおじいちゃん子だった。
両親が離婚してからというもの、母方の祖父と祖母は非常に太一を可愛がってくれていた。
真っ直ぐで優しい祖父の人間性を、太一は尊敬していたのだ。
彼は不安を募らせながら、車窓の風景を眺め考えていた。
今回のことで一番胸を痛めているのはきっと祖母なのだろう、と。
病院に着くと、看護婦に祖父の部屋へと案内された。
そこで見た祖父は、今まで見たことのない祖父だった。
「多発性骨髄腫です」
居合わせた医師が呟く。
太一はひどく困惑した。
聞いたことのない言葉(おそらく病名だろう)、医師の口調、そして何より祖父の姿。
それら全てが太一の神経を取り乱す作用となった。
祖父は無数のチューブに繋がれていた。顔は透き通るような薄弱な色で、やはり意識はなかった。
「あの先生…祖父はどうなるんでしょうか…?」
母は痛ましい表情で祖父を見つめている。
「しばらくは入院せざるを得んでしょうな」
医師はそれだけ言うと事務的な話に移った。
「なに、心配はいりません。つきましては今後の進め方をご説明しますので、また後ほどにでも」
「は、はぁ…」
母は何やら拍子抜けした顔をする。
太一は医師の言葉の裏を読み取った。
祖父は実際に危うい状態にあるのだということを。
…俺たちがどれだけ長い間じいちゃんを見てきたと思ってるんだ。
ばあちゃんが聞いたら何て言うかな、まったくいい加減な医者め!
太一は言い知れぬ怒りを覚えた。
その時だった。
祖父の意識が戻り、その目がゆっくりと開けられたのだ。
続く
「今から病院行くからね。おじいちゃんの意識が失くなってしもうたんよ…」
太一は母と一緒に車に乗り込む。
「なぁ、様態はどうなん?おじいちゃん、死んでしまわへんやろな…?」
太一はたまらず母に訊いた。
彼はいわゆるおじいちゃん子だった。
両親が離婚してからというもの、母方の祖父と祖母は非常に太一を可愛がってくれていた。
真っ直ぐで優しい祖父の人間性を、太一は尊敬していたのだ。
彼は不安を募らせながら、車窓の風景を眺め考えていた。
今回のことで一番胸を痛めているのはきっと祖母なのだろう、と。
病院に着くと、看護婦に祖父の部屋へと案内された。
そこで見た祖父は、今まで見たことのない祖父だった。
「多発性骨髄腫です」
居合わせた医師が呟く。
太一はひどく困惑した。
聞いたことのない言葉(おそらく病名だろう)、医師の口調、そして何より祖父の姿。
それら全てが太一の神経を取り乱す作用となった。
祖父は無数のチューブに繋がれていた。顔は透き通るような薄弱な色で、やはり意識はなかった。
「あの先生…祖父はどうなるんでしょうか…?」
母は痛ましい表情で祖父を見つめている。
「しばらくは入院せざるを得んでしょうな」
医師はそれだけ言うと事務的な話に移った。
「なに、心配はいりません。つきましては今後の進め方をご説明しますので、また後ほどにでも」
「は、はぁ…」
母は何やら拍子抜けした顔をする。
太一は医師の言葉の裏を読み取った。
祖父は実際に危うい状態にあるのだということを。
…俺たちがどれだけ長い間じいちゃんを見てきたと思ってるんだ。
ばあちゃんが聞いたら何て言うかな、まったくいい加減な医者め!
太一は言い知れぬ怒りを覚えた。
その時だった。
祖父の意識が戻り、その目がゆっくりと開けられたのだ。
続く
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