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闇に見い出す?

[437]  けん  2006-11-12投稿
急いで家に帰ると、玄関で母が待っていた。

「今から病院行くからね。おじいちゃんの意識が失くなってしもうたんよ…」

太一は母と一緒に車に乗り込む。

「なぁ、様態はどうなん?おじいちゃん、死んでしまわへんやろな…?」
太一はたまらず母に訊いた。

彼はいわゆるおじいちゃん子だった。
両親が離婚してからというもの、母方の祖父と祖母は非常に太一を可愛がってくれていた。
真っ直ぐで優しい祖父の人間性を、太一は尊敬していたのだ。

彼は不安を募らせながら、車窓の風景を眺め考えていた。
今回のことで一番胸を痛めているのはきっと祖母なのだろう、と。

病院に着くと、看護婦に祖父の部屋へと案内された。

そこで見た祖父は、今まで見たことのない祖父だった。

「多発性骨髄腫です」
居合わせた医師が呟く。

太一はひどく困惑した。
聞いたことのない言葉(おそらく病名だろう)、医師の口調、そして何より祖父の姿。
それら全てが太一の神経を取り乱す作用となった。

祖父は無数のチューブに繋がれていた。顔は透き通るような薄弱な色で、やはり意識はなかった。

「あの先生…祖父はどうなるんでしょうか…?」
母は痛ましい表情で祖父を見つめている。

「しばらくは入院せざるを得んでしょうな」
医師はそれだけ言うと事務的な話に移った。
「なに、心配はいりません。つきましては今後の進め方をご説明しますので、また後ほどにでも」

「は、はぁ…」
母は何やら拍子抜けした顔をする。

太一は医師の言葉の裏を読み取った。
祖父は実際に危うい状態にあるのだということを。

…俺たちがどれだけ長い間じいちゃんを見てきたと思ってるんだ。
ばあちゃんが聞いたら何て言うかな、まったくいい加減な医者め!
太一は言い知れぬ怒りを覚えた。

その時だった。

祖父の意識が戻り、その目がゆっくりと開けられたのだ。




続く

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