闇に見い出す?
「じいちゃん、じいちゃん!聞こえるか?!」
太一は必死に声を抑えつつ叫んだ。
祖父は何度か頷き、口を動かし何かをしゃべろうとしていた。
そこに表情はなかった。
「じいちゃん…」
太一は肩を落とした。
同時に祖父の目は再び閉ざされたのだった。
それから母と二人で病院を出た。
「今日は学校に戻らんと家でゆっくり休んどき」
優しく母がいう。
「うん…」
それから家に着くまで二人は何も喋らなかった。
「なぁ太一。お母さん、ちょっと考えたんやけどな」
母が夕食の準備をしている時だった。
「太一はあんまり心配せんでええねんで。ほら、もうすぐ受験やろ。今は勉強に集中せんと…。じいちゃんのお見舞いは毎日お母さんが行くしな」
「でも…」
「あんたがじいちゃんのこと心配でたまらんのはわかるけどな」
母は頼りない作り笑いを浮かべた。
母もきっと辛いのだろう。自分の父があんな状態にあるのだから。
太一はそれを理解した上で、母の隣りへ並び、黙って夕食の準備を手伝った。
翌日、太一は学校へ行った。
いつもと変わらない朝の風景。
誰も昨日の太一の早退を気にしない様子だった。
あるいは担任が配慮してくれたのかも知れない。
「おはよー櫛森くん。これ昨日の配布プリント」
隣りの席から水野裕子が手を伸ばす。
「…おい、こら、櫛森太一」
水野がいたずらっぽく声を荒げる。
「…あ、ああ。すまん聞こえへんかった」
「何ぼさっとしとん?頭に寝グセつけたままやし」
「あほ、これは無造作ヘアーや。プリントどうも」
「はいはい」
水野はぷいと別の方を向いた。
朝のこいつとの絡みは好きなんだが…今朝はいささか神経が張り詰めている。
太一はぼんやりと考え込み、流れのままに学校での時間を過ごした。
そして家に帰るなり、太一は病院に向かうことになったのだった。
続く
太一は必死に声を抑えつつ叫んだ。
祖父は何度か頷き、口を動かし何かをしゃべろうとしていた。
そこに表情はなかった。
「じいちゃん…」
太一は肩を落とした。
同時に祖父の目は再び閉ざされたのだった。
それから母と二人で病院を出た。
「今日は学校に戻らんと家でゆっくり休んどき」
優しく母がいう。
「うん…」
それから家に着くまで二人は何も喋らなかった。
「なぁ太一。お母さん、ちょっと考えたんやけどな」
母が夕食の準備をしている時だった。
「太一はあんまり心配せんでええねんで。ほら、もうすぐ受験やろ。今は勉強に集中せんと…。じいちゃんのお見舞いは毎日お母さんが行くしな」
「でも…」
「あんたがじいちゃんのこと心配でたまらんのはわかるけどな」
母は頼りない作り笑いを浮かべた。
母もきっと辛いのだろう。自分の父があんな状態にあるのだから。
太一はそれを理解した上で、母の隣りへ並び、黙って夕食の準備を手伝った。
翌日、太一は学校へ行った。
いつもと変わらない朝の風景。
誰も昨日の太一の早退を気にしない様子だった。
あるいは担任が配慮してくれたのかも知れない。
「おはよー櫛森くん。これ昨日の配布プリント」
隣りの席から水野裕子が手を伸ばす。
「…おい、こら、櫛森太一」
水野がいたずらっぽく声を荒げる。
「…あ、ああ。すまん聞こえへんかった」
「何ぼさっとしとん?頭に寝グセつけたままやし」
「あほ、これは無造作ヘアーや。プリントどうも」
「はいはい」
水野はぷいと別の方を向いた。
朝のこいつとの絡みは好きなんだが…今朝はいささか神経が張り詰めている。
太一はぼんやりと考え込み、流れのままに学校での時間を過ごした。
そして家に帰るなり、太一は病院に向かうことになったのだった。
続く
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