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闇に見い出す?

[402]  けん  2006-11-12投稿
「状態としましては、今後意識の回復を期待することは、極めて難しいという――」

太一は最後まで聞く気になれなかった。
なぜこんなことになるのだ。
何もかもが理不尽なことのように思えた。

ふと祖父の方に目をやると、昨日と変わらぬチューブだらけの姿があるだけだった。
太一はこれらを全て取っ払ってやりたい気持ちに駆られた。

あんなによく笑っていたじいちゃん。

どこへ行くにも一緒だったじいちゃん。

思い出す分だけ胸が詰まってくる。

これ以上は堪え切れぬ様子で、太一は部屋を駆け出て行った。

「太一…!」
後ろに響く母の声を振り切り、太一は病院を後にした。

歩いて家に帰るにはあまりにも遠すぎる。
太一はあてどもなく近くにある公園へと歩いた。

ベンチに腰を下ろすと同時に、熱く頬を伝うものがあった。
張り詰めていたものが急に溢れだしたのだ。
太一は戸惑いながらも、その場でじっと身を震わせていた。

「…櫛森くん?」

声の方を向くと、そこには水野がいた。
「どうしたの…?」

太一は声を出すことが出来ずただ俯いていた。

「…………」
水野は物憂げな表情で太一を見守っていた。
そして口を開く。
「何か悲しいことがあったんやろうね…私も、その…気持ち分かるよ」

水野の様子がいつもと違うことで気になりはしたが、太一は顔を上げなかった。

「私さっきまであの病院にいたんやけど…なんかもう、辛すぎて…」
水野の声が弱々しくもつれる。
空には夕暮れが染まっていた。

太一ははっとして少し水野に顔を向けかけたが、やはりそれだけだった。

「ごめん…櫛森くんも辛いんやもんね。だから泣いてたんやろうし…」
いつもは見せない水野の弱々しさが太一の心を揺らした。

「…慰めたげようか?その…何て言ったらいいんかな…私のこと、好きにしてもいいよ」

太一の胸は大きく波打った。それと同時に憤怒が込み上げてきた。

「それはちゃうやろ!!」
言い様のない複雑な気持ちに駆られ、太一は水野と公園を後にした。




続く

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