携帯小説!(PC版)

トップページ >> エッセイ >> 闇に見い出す?

闇に見い出す?

[300]  けん  2006-11-12投稿
太一は混乱していた。
祖父のこと、受験のこと、そして水野のこと…
そんな様々な要素が彼の思考をかき乱していたのだ。

「太一!」
道路脇をとぼとぼ歩いていると母が車を寄せていた。
「さぁ帰るよ」

車の中では祖母の話をした。
夕食は祖母が振る舞ってくれるのだという。
母は努めて明るく話をした。

「ばあちゃんの料理はほんまおいしいもんなぁ。太一、手伝いせなあかんで」

時折見せる母の笑顔に、太一はいちいち詮索を入れないことにした。
「そやな!あ〜めっちゃお腹空いたわ」



祖母の家は妙にだだっ広い感じがした。
人が一人いないだけでこれほどまでに印象が変わるものなのだ。
それはひとえに、祖父の存在の大きさを表しているのだろう。

「まぁいらっしゃい!よく来たねぇ」
祖母がにっこり笑うと顔中に幸せそうな皺が寄った。
その表情は母にそっくりで、どことなく祖父にも似ていた。

自分もいつかはこういう顔が出来ればいいのにな――
太一はふとそう思った。



夕食後、太一は驚くこととなった。

太一の知らない祖父の写真、または祖父にまつわる話。
そういったものを惜しみ無く祖母が披露してくれたのである。

「うっわ!じいちゃんの髪が黒いっ」

「そやろ。まゆ毛もきりっとして、いかにも頑固者さね」
祖母は終始笑顔だったような気がする。

不思議な感覚だった。
太一は祖父が大好きで、尊敬している。
ちょっとした仕種や滑稽な癖もよく知っている。
しかし、知らないことのほうがはるかに多かったのだ。

白黒の証明写真のようなものに、男盛りの頃の祖父が写っている。

驚きを隠せないような、思わず吹き出してしまうような、そしてなぜかしんみりしてしまうような、様々な感覚が太一を包んだ。

「じいちゃんのことがだーいすきや」
祖母は素敵な笑顔を浮かべながらいった。

そして次第に太一の中である考えが芽生えはじめた。



続く

感想

感想はありません。

「 けん 」の携帯小説

エッセイの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス