航宙機動部隊6
星系合衆国「ユナイティド=システムズ」は、五00年の歴史を持つ、中央域文明圏屈指の重鎮だ。 集権型の統治形態を、さっさと放棄して、中世型の緩やかな連合政体に切り換えた同国は、継続的な拡大を背景に、寄り合い所帯ながらも、大きな発言権を有していた。 反面、恒常的な中央政府も統一した正規軍すらこの国にはなかった。 行政は全て、民間の請け負い業者に、アウトソ―シングし、軍事に至っては、戦役毎に連合艦隊を組んで、寄せ集めの混成兵力で、事態を処理して来た。 言わば、顔のない「大国」なのであった。 連合艦隊司令長官に、任じられたのは、白髪の紳士、ネカイア公国・第八代公爵にして、同国の名誉元帥を兼ねる、クラッタであった。 彼が、堂々たる一大機動部隊の責任者に選ばれたのは、軍事的才能や、経験に因るものではなかった。 多分に封建的かつ、政治的な妥協と、力学上の積みかさねの下成り立った、それは、生暖かい産物であった。 年功・身分・人柄―五000年も昔に、東洋の賢哲が確立した原理は、今なお健在だった。 それでも、まずまず妥当な人選ではあった。 実戦は参謀や将校がやれば良い。 寧ろ、宙際政治や外交戦では、一見不合理な、そう言った要素達こそが、反ってモノを言う。 その方面なら、十二分の実績と手腕が、公爵には有った。 星系合衆国・連合艦隊は、その旗艦を〈D=カ―ネギ―〉に置いた。 ボ―タ王国・歴代国王の座乗船で、巨船ではあるが、とても軍艦と呼べる代物ではない。 銀河中の貴顕・名族を相手にした、要するに豪華客船だった。 外観もそうだが、特に、内装に至っては、贅美の極を尽した、それこそ全人類の宮城第邸・大観高楼で、びっしりと詰め込まれていた。 よってこんな舟が、帝国と戦火を交えれる筈がない。それでもある意味、世をナメた決定が成されたのは、宣伝・外交の舞台としては、これ以上なく打って付けと、考えられたからであった。 そう、この舟は、より華やかかつし烈な、もう一つの戦場になるべく、用意されたのだ。
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