思い馳せぬまま
俺は今まで、恋というものが、どういうものか知らなかった。彼女と出会うまでは…。〔これは俺が高校生の時の話〕 冬のある日、本屋にいた俺は見覚えのある女性を発見した。「まさか!」と思い、声を掛けてみた。 「もしかして…〇子ちゃん?」すると彼女は、「あなたは…〇〇君!!」まさに偶然だった。彼女は、中学の時の同級生で、仲が良かった女友達の一人だ。 「お前、変わったな。化粧濃いよ。」突然の出会いに、ありがちな話題を吹き込んでしまった。 「〇〇君は、あんまり変わってないね。まぁ背が高くなった」彼女の言葉に、何故か俺はショックを受けた。立ち話だったが、中学の時の思い出話や世間話を長い間していた。すると彼女が、「立ち話もなんだから、うちに寄ってかない?丁度家には誰も居ないんだぁ」と言った。俺は耳を疑った。一つ屋根の下で、女性と二人きりになるなんて、夢にも思っていなかった。「遠慮しとくよ。第一、俺が居たってつまんないよ。」 行きたい気持ちもあったが、ここは退いといた方が良いと考えた。しかし彼女は、「〇〇君に来て欲しいの…。」 俺はドキッとした。その瞬間胸の鼓動が一気に高まった。そして、鼓動が治まらないうちに、彼女の家に着いた。
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