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嘆きの華

[560]  最上  2006-11-17投稿
「もうやめないか」
その声は二ヶ所からほぼ同じに発せられ、二重の音響二重の威圧を放っていた。店の端で下を俯きながら爪楊枝をくわえている男。そしてグラスを研いているバーテン。それぞれが少女にとっては英雄だった。

予測不能。まさかの意志の合致にある男は目を丸くし、ある男は動きを止め、ある男は、
「バーテンは黙ってろ。それと、そこの若造。爪楊枝くわえて調子こくなら今のうちだぞ。見ず知らずの女を助けるたぁ大したタマだなおい」
「店の中で暴れるのなら、貴様等は客ではない」
温厚そうなバーテンは獲物を前にした狩人のような目付きにいつのまにか変わっている。そして、

「俺を若造と呼ぶか。人は歳じゃないと思うぜ。それと、今のうちとか言ったな。なんならこのまま調子こき続けてやろうか?人の指図をうけるのは趣味じゃないんでね。女を襲うのもな」
俺は中指を突き上げて男に拳を振りかざした。

「お前等知らないようだなぁ…この街で白い狂犬と呼ばれた俺様、このクレイブ様を知らねぇとはよ。なんなら今から教えてやるよ。記憶の補償はしねぇがな!」熊のような男はその巨体に似合わない素早さでテーブルを弾き飛ばした。

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