携帯小説!(PC版)

カカシ

[472]  コンパス  2006-11-18投稿
ずっと横を向いているカカシがいる
それはいつも黙ったまま
表情を変えず佇んでいる
透明な目と鼻と口と眉は動かさず
姿勢も目線も変えぬまま
僅かに開いている口は
風の入口になっている
誰もいない風景に
いつも横向きにいる

分かっている
カカシはカカシ
いくら祈っても
カカシはカカシ
いくら嘆いても
カカシはカカシ
怒りに任せて怒鳴っても
カカシはカカシ
静かに静かにただただ横向き
その頬に私の雫を落としても
カカシはカカシ
涙を流したように見えない
せめて操り人形でもいい
もう一度私とこのカカシに
向かい合う機会を下さい
いくら雨を落としても
水溜まりができるだけで
腹立たしい曇天が
前が霞むような霧雨が
草木を掻く風が
あっという間に消し去った
太陽も
月も
ガラスの破片のような星々も見えやしない

いつものような曇り空
いや 今日はさらに厚みがかかっている気がする
いつものようにカカシを見に行った
カカシは仰向けに眠っていた
私から見て横を向いている顔
カカシは透明な口を実体化し、風のつぶやきに似た声を出した
その後カカシは優しくほほ笑んだような気がした
ぼやけにぼやけた輪郭は
微かを一杯に変えた

もういつもの所にカカシはいない
空はどこまでも中途半端に澄み渡り
流れる雲は退屈だろう
真っ白で直視出来ない太陽は
私に熱を与えてくれる
笑顔になれる
今、あのカカシは
私の中にいるよ
ちょうど心臓の辺りだと思う
私の…私のカカシ
私の……大事な………

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