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君がくれた光―1―

[473]  希篦湖  2006-11-19投稿
さみしかった
辛かった
誰かに頼りたかった…

街中の私立高校に通う美樹。
明るくて元気な美樹の周りはいつもにぎやかで、人懐っこさと、真面目さでみんなから信頼されていた。


ただ、誰も知らなかった…
美樹が無理をしていることを……


ある日の学校の帰り道、美樹はなんとなく公園の中を通った。普段は遠回りになるし、子供ばかりいる公園がなんとなく居づらくて通らない。
公園の噴水があるところに1人の男が座っていた。
細身のジーパンにTシャツ、帽子を深くかぶっていた。その男の横にはギターケースが置いてあった。
男はギターを取り出して歌い始めた。
聞いたことのない曲だが、ギターのメロディーと男の優しい声が美樹を懐かしい気持ちにさせた。
美樹は男から少し離れた場所で曲を聞いた。

歌い終わると男が美樹の方を見た。
帽子の下に顔が見えた。
目が細くて、優しそうな顔だ。
美樹は照れて少しほほ笑んだ。
『聞きたい曲ある?』
男がきいた。
『え?え〜と…』
好きな曲はいっぱいあるのになかなか出てこない。
『さっきの誰の曲?その人の歌聞きたい!』
美樹が言うと、男は嬉しそうな顔で
『今の俺が作った曲なんだ。』
と言って恥ずかしそうな顔をした。
『ほんと!?すごい!』
『そんなことないよ!』
『ううん!!だってまた聞きたいって思ったもん!!ねぇ、他にもあるの?聞かせて!』
男はまた歌い始めた。
男が歌っている時、美樹はあるものに気付いた。ギターケースの中に1つのファイルがあった。そこには
"与太郎"
と書いてあった。
曲が終わり、美樹は精一杯の拍手を送った後、ファイルを指しながら
『ヨタロウって読むの?名前?』
『あぁ、名前っていうかペンネームってとこかな。』
『へ〜…なんで与太郎?』
『与太者ってね、馬鹿者とかダメ人間って意味があるんだ。ようするに……』
『馬鹿なんだ?』
美樹が笑いながら言うと与太郎は優しい笑顔を見せながら頭を叩く振りをした。
美樹はまだ与太郎の歌を聞きたかったが、今日は帰ることにした。
『あの…また着ていいですか?』
不安そうにきく美樹に与太郎は
『明日も昼からいるから。またおいで。』
と優しく言って美樹に手を振った。

―この日から美樹の闇に光が差し込んできた―

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