携帯小説!(PC版)

Orion 1

[963]  SEVEN  2006-11-22投稿
 吐く息も白く染まり、吹き抜ける風も凍えるようになる季節。空に輝く星座がある。君が一番好きだといったオリオン座。ギリシャ神話での暴君だと話しても、君はそんなことおかまいなしと言わんばかりの眼差しで、今日もオリオン座に夢中だ。何がそんなに君の心を惹きつけるのだろう。あの星座にとどめを刺したのが僕のさそり座だと知ったら、君は怒るかな。この夜空を、後何回君と見れるのだろう。

 

突然の連絡を受けて駆けつけた僕の前で君は泣いていた。自分の冷たくなった体の傍らで泣き崩れている両親を見て。僕に気づき、涙をぬぐって必死に笑う。それはいつもと変わらない笑顔。僕は彼女に別れの時間まで1週間だと告げた。彼女は大きくうなずいた。泣きながら、何度も何度も。



僕には小さなころから、人には見えないものが見えた。それは時に恐ろしく、時に悲しげで。とにかくそいつらときたら誰一人幸福そうなやつはいなかった。そんな奴らに囲まれて育てば、嫌だって暗い子に育つ。だから友達だっていなかったし、親も気味悪がってろくに口をきかなかったのでいつも一人だった。こんな風に生まれてきた自分を呪ったこともあったが、今では気にもならない。これもひとつの個性だと、受け入れてくれる人がいたからだ。あの頃毎日闇の中で震えていた僕に、やさしく手を差し伸べてくれた人。僕に射したひとすじの、しかし強く強く輝く光。それが君だったんだ。











 
 

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