航宙機動部隊15
リクは、とんだ大悪党と化していた。 相手が知らないのを良い事に、言いたい放題である。 『ここは使っちゃいかんと、言った筈だぞ』 パネルカードを手に、一先ず庭園の、敷き詰められた小石達の上にまで降りた少女の背中に、リクは念を押した。 『そこじゃあなきゃ、インスピレーションが湧かないのよ』 履物を引っ掛けながら、顔と声を向け返して来る相手に、悪意はなかったが、 『お前のスタジオじゃねえんだ!二度とここに上がるんじゃねえ!!』 リクは、畳の上に、仁王立ちになって、容赦ない罵声を浴びせた。 『丁度良い機会だ。この際言わして貰おう―俺は、お前みたいのが、大嫌いなんだ!初め会った時からずうっとな!!』 きょとんと立ち尽くす、長身に、リクの残酷な言葉が、更に投げ掛けられた。 『蝶よ花よと育てられて、名門を傘に着やがって、物見遊山気分かよ!!貴族のお嬢ちゃんが、刺激を求めて、レジャ―がてらに戦争か!お守りされる身になってみろ!俺はなあ、下町(スラム)ウル区の貧乏高層コンドミニアムの九番目に生まれ、公職者コ―スに入った。国への奉仕なんて、これっぽっちもねえ、そんなものはクソ喰らえだ!大昔の軍隊と同じで口減らしの為だ!!』 黙ったまんまの少女に、リクは傲然と怒りを込めて、突き立てた中指を、示してやった。 『運悪くこんな、辺境中の辺境にまで往かされて、おまけに、頼りにすべきパ―トナ―が、ふざけまくったヤロ―だ!!帝国に殺される前に、とっとと帰れ!さもなくば、俺の役職を剥奪し、自由の身にするんだな!!』 リクは、全てが気に入らなかった。他に選択肢がなかったから、宇宙に飛び出した自分に比べて、身分・出自・血統・どれも本来なら、一生拝めない、雲の上の令嬢が、目の前で、遊んでいるのだ。おまけに、その巨大な境を感じさせない、なれなれしさが、一々癇に触った。庶民なりのプライドの持ち主に取って、尊厳を反って奪われる様に思えて来るのだ。
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