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Jumpin' Five 10

[347]  曽根菜由美  2006-11-26投稿
 ところが…。
「進一くん…。」
私と話し終わって、うかない顔をしている進一さんを手招きで沢井さんが呼びとめた。ひそひそ…というほどではなく、普通に会話していたので、だいたいの内容はわかった。
「9月29日日曜日に、東部公民館(実名?)が取れたから、今日の合奏のときに連絡してくれる?」
「あ、取っていただけたんですか?良く取れましたね。すみません。」
「じゃあ、頼むよ。」
「はい。」
9月29日か。一週間前って少し慌しいけど、一回でもいいから、一日練習が取れるっていうのは、いいかもしれん。
「…という訳だから。」
「あ…はい。」
進一さんが、いつのまにか私に向き直って、声をかけた。良かった。言ってみるもんだ。
 ん?待てよ?9月29日は学校の文化祭の次の日じゃないか。疲れてるけど、行くしかないな、うん。
 かくして練習が始まった。沢井さんに言われたとおり、練習日程のことについて、進一さんから連絡があり、続けて合奏が行われた。今日の打楽器の出席率も良くない。岩田さん、富山くん、私の3人だけ。美加は、本番(10月6日)は出れないそうである。鼓隊の本番とぶつかるらしい。それで、岩田さんが、
「〈ノヴェナ〉のメンツが足りない。」
と言って悩んでいるのである。全部は無理だが、4人だと形になる。しかし、3人になってしまうと、ちょっときついものがある。
 今日は、その〈狂詩曲『ノヴェナ』〉の合奏が中心であった。
 …とそこへ現れるは、幽霊会員の畑中さん!
 そうか、畑中さんが出れれば、4人になる。
 私は、譜面の準備をしながら、畑中さんにも譜面を渡そうとした。しかし、渡せない雰囲気が漂っていた。岩田さんが畑中さんに何か怒っている。何を怒っているのかはわからないが、練習にくればいいんだから、そんなに怒らなくていいのに、と思う。ちょっと気の毒だったが、岩田さんがその場を離れるのを待って、私は〈ノヴェナ〉の譜面を畑中さんに渡した。
「うん、ありがとう。」
私より3つ年上の畑中さんは、笑顔で返してくれた。彼は、私が高校で入れ替わりの後輩だということを知っているのかな?
 結局、今日のメンツは、ティンパニ…畑中さん、バスドラとシンバル…富山くん、スネア…岩田さん、鍵盤…私、という形で合奏した。本番はどういうメンツでやるかわからない。
 その前に、本番が行えるかどうかがわからない。

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