フェニックス 11
意識を取り戻し眼を開いたゼノスだが、なぜか目の前は真っ暗。そして、顔になにやら柔らかい感触。顔を少し後ろにもっていくとその正体が判明した。女性の胸…だった。
視線を上げると、馬車が急停止したことによる不安と、見ず知らずの男が自分の胸に顔をうずめてきたことによる恥ずかしさが混ざりあって何ともいえない表情をしていた。
さすがのゼノスも、顔を背けるしかなかったが、背けた先にはセティがいた。……鬼、がいた。
「ゼノス、あなた何やってるの?」
口調は優しく、ニコッと笑うが、眼の奥は全く笑っていない。左手が上着の中に入っているのに気がつくと、生の終わりすら感じさせる。
「いや、これはだな…不可抗力で、あの、やりたくてやったわけじゃ…」
オタオタと言い訳をするゼノス。
すると、
「そんな!ひどい……」
胸に顔をうずめられた女性は、どうやら不安よりも恥ずかしさが勝った様で、顔を赤くして両手で胸を抑えながら言った。
「え!いや、あの、その…」
右には鬼。前には眼に涙を浮かべる女性。八方塞がりのゼノスは、
「外の様子を見て来る!」
「あっ!ちょっ…」
セティが何か言いかけるが、もう逃げるしかなかった。
馬車から飛び降りるゼノス。
「やれやれ」
安堵の溜め息をつき馬車の前の方に行くと、
「あ…あ…」
馬車の操縦士が、恐怖でガタガタと肩を震わせ凍り付いていた。
「おい!どうした!何があった!?」
「…ク、クロノス…」
震える腕を上げ、指を前方に向けて指す。
馬車の進路を塞ぐ様にしてその男はいた。取り囲む様にして倒れているのは護衛の傭兵達。1…2……全滅だった。
いつでも戦闘に移れるように全身に力を漲らせながら近付いていく。
「まだ戦える奴がいたか。しかも、こいつらとは雲泥の差の力を持っているな?」
もう絶命している傭兵の頭を踏み砕く。
「クロノスがこんなところで何をしている」
並の者ならばそれだけで気絶しそうな威圧感を声に乗せる。
「お前にそれを言う必要があるのか?」
周りの空間が僅かに歪んだ様な気がした。
「いや、無いな」
言うや否や、疾風となって突っ込む。
微動だにしない男の体にゼノスの剣が食い込む。その瞬間、揺らいだ空間が男を包み込み消え去った。ゼノスの一撃は空を切る。
離れた場所で空間が揺らぎ、男は現れた。
「速いな。危うく跳躍前に斬られるところだったよ」
視線を上げると、馬車が急停止したことによる不安と、見ず知らずの男が自分の胸に顔をうずめてきたことによる恥ずかしさが混ざりあって何ともいえない表情をしていた。
さすがのゼノスも、顔を背けるしかなかったが、背けた先にはセティがいた。……鬼、がいた。
「ゼノス、あなた何やってるの?」
口調は優しく、ニコッと笑うが、眼の奥は全く笑っていない。左手が上着の中に入っているのに気がつくと、生の終わりすら感じさせる。
「いや、これはだな…不可抗力で、あの、やりたくてやったわけじゃ…」
オタオタと言い訳をするゼノス。
すると、
「そんな!ひどい……」
胸に顔をうずめられた女性は、どうやら不安よりも恥ずかしさが勝った様で、顔を赤くして両手で胸を抑えながら言った。
「え!いや、あの、その…」
右には鬼。前には眼に涙を浮かべる女性。八方塞がりのゼノスは、
「外の様子を見て来る!」
「あっ!ちょっ…」
セティが何か言いかけるが、もう逃げるしかなかった。
馬車から飛び降りるゼノス。
「やれやれ」
安堵の溜め息をつき馬車の前の方に行くと、
「あ…あ…」
馬車の操縦士が、恐怖でガタガタと肩を震わせ凍り付いていた。
「おい!どうした!何があった!?」
「…ク、クロノス…」
震える腕を上げ、指を前方に向けて指す。
馬車の進路を塞ぐ様にしてその男はいた。取り囲む様にして倒れているのは護衛の傭兵達。1…2……全滅だった。
いつでも戦闘に移れるように全身に力を漲らせながら近付いていく。
「まだ戦える奴がいたか。しかも、こいつらとは雲泥の差の力を持っているな?」
もう絶命している傭兵の頭を踏み砕く。
「クロノスがこんなところで何をしている」
並の者ならばそれだけで気絶しそうな威圧感を声に乗せる。
「お前にそれを言う必要があるのか?」
周りの空間が僅かに歪んだ様な気がした。
「いや、無いな」
言うや否や、疾風となって突っ込む。
微動だにしない男の体にゼノスの剣が食い込む。その瞬間、揺らいだ空間が男を包み込み消え去った。ゼノスの一撃は空を切る。
離れた場所で空間が揺らぎ、男は現れた。
「速いな。危うく跳躍前に斬られるところだったよ」
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