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一シズク 

[338]  なる  2006-11-27投稿
顔をぐしゃぐしゃにして、お前は泣いた。
  
いや、俺の勘違いかもしれない。お前の頬を伝っていたのは、むかつく雨かもしれないから。
でも、確かなのはお前が

『自分が怖いんだ』

って言ったこと。すげぇ、辛そうな顔して。

 一シズク 

「腹へらね?」

登校して一時間も経っていないのにこのセリフ。

「あ〜、減ったかも」
「やっぱり??」

なにがやっぱり??なんとなく返したセリフに喜ぶコイツ。

「翔〜。授業どうする?次ヤマだけど」
「……寝る」

ヤマってのはこの学校の数学教師で、イヤミばっか言うやな奴。一応担任だけど、俺にとってはいないのと同じ。

「翔ヤマのこと嫌いだもんね〜。話しかけられても無視してるっしょ」
「智行けば?授業」
「…俺もヤマ嫌いだし」
「あっそ」

智は人に合わせるとこがある。自分の意見をあんま言ってない、と俺は思う。

「おっ!翔上!鳥の大群!!」
「ほんとだ…っか智、鳥ぐらいでさけ「ああぁ!!!」

驚いて飛び起きる。智は仰向けになったまま、俺の名前を呼んだ。というか、叫んだ。

「翔ーーー!!!たっ、助け…」
「なんだよいったい?!!」
「ここ…。ここにー」

智の指差した先、制服の胸の辺りには、白と黒が混ざったような物体。

「……ぶっ!!」

物体の正体に気づいて、おもわずふきだしてしまった。

「っ!!笑うなよ〜!助けてくれ〜〜!!」
「は〜、はは、悪い悪い!ちょっと待て」

こみあげてくるものを抑えて、ポケットからティッシュを取り出す。何枚かつかんで鳥の排泄物を拭き取った。

「だっせ。〜ぷっ!くくっ」
「笑うな!あ〜、洗濯だなこりゃ…」
「ほんとだっせ。っか…くせっ!!智くせ〜!!」
「嫌だ〜〜!!」

智は制服を脱いで投げ飛ばした。俺は、智に起こった悲劇に腹をかかえて笑った。
とっくに授業は始まっているだろが、俺達にとって授業を休むことなんて日常茶飯事だったから、気にすることはなかった。
誰もいない屋上に、俺たちの笑い声だけが響いた。





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