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悪魔払い

[509]  御稲 糺  2006-11-29投稿
ある晩のこと、いつもよりうれしそうなエヌ氏が、おお声をあげていた。
『ああ神よありがとう。』
なんでも、最近悪魔が部屋にいると悩んでいたのだ。
『この薬さえあれば…。』
と、毎日の帰宅してからのエヌ氏の疲れ切った顔などなく、むしろ口のゆるみを押さえられないほどだ。

実は、エヌ氏は薬学者で、かねてから研究していた薬が完成したらしい。
『はあ早く試したいな。』
そんな様子で部屋へ向かうとふいに呼び止められた。
『帰ったなら、まず…。』
その言葉に聞き飽きた様に
『やい悪魔め。今日の俺をなめるなよ。』
エヌ氏はすかさず薬を飲み込で、そう言った。
『お前さん今何を飲んだんだい。』
『これは今日完成した悪魔払いの薬だ。覚悟しろ。』
『何をまた馬鹿な事を言っているんだい。困った人なことだ、まったく。』
『ええい、黙れ黙れ。』

エヌ氏の手は強く相手の首を絞め付けて、悪魔払いをするんだという一心に目の色を変えていた。
『ちょっと、待って…。』
と、苦しくかすれた声にも今のエヌ氏には気がつかなかった。

そして気づいたらエヌ氏は警察の留置所にいた。
『落ち着いたかい。』
見張りにいた警察官と目が会い、話しかけられた。
『なんで、こんな所に。』
エヌ氏は呆然とした顔で、周りを見渡した。

『もうすぐ取り調べが始まるから、それまでじっとしてなさい。』
『はあ、でも何故…。』
『何があったかは、知らないが隣の家の人から通報があったらしい。』
『わたしは、何かしたんでしょうか。』
とぼけた顔のエヌ氏に対し、困った顔で警察官がこたえた。
『あなたは、自分の奥さんの首を絞めて殺したんですよ。』
『わ、わたしがですか。』
驚いた顔のエヌ氏にさらに驚いた顔で警察官が言った。
『あなたは何も覚えてないんですか。』

エヌ氏には、やっぱり思い出せないという表情に
『まあ、家庭でストレスがたまるのも無理ないですが、罪を犯した事は事実だから。』
警察官は、ぶっきらぼうに返した。

『そういえば、最初に駆け付けた僕の同僚から聞いたんだが、あなたを見たとき悪魔かと思ったと言っていたかな。』

感想

  • 5747: こういうの好き☆これってSFなんですか?☆ぽんぽこ [2011-01-16]

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