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矢口 沙緒さんの投稿された作品が226件見つかりました。

 
  • 魔女の食卓 19

    ほとんど携帯の電源を切っているのだ。やっと土曜日の朝に連絡がついたと思ったら、返ってきた返事は素っ気ないものだった。その時の第一声も気に入らなかった。『なんだ、君か』いったい、どういう事なのよ!彼にあまりにも軽く扱われたその一言が腹立たしかった。私があなたに惚れてるんじゃない。あなたが私に夢中なのよ。それは彼女にとって、とても重要な認識だった。学生の頃から、彼女に言い寄ってくる男は後を断たなかっ
    矢口 沙緒 さん作 [377]
  • 魔女の食卓 18

    戸倉「それはどうかなぁ。だって、大西麗子よりも魅力的な女なんて、めったにいないよ。それにさぁ、部長は簡単にその辺の女に引っ掛かるような、ふわふわした男には見えないしさぁ」山口「あたし、もうひとつ気になる事があるのよねぇ。部長の態度がおかしくなったのはさぁ、あの夜からなのよね」戸倉「あの夜って?」山口「川島さんを車の助手席に乗せて、どこかへ出掛けるの見たっていったでしょ。あの次の日から様子が変なの
    矢口 沙緒 さん作 [400]
  • 魔女の食卓 17

    「それじゃ、お言葉に甘えてお邪魔しようかな。またあのカレーを」「いいえ、今夜はカレーじゃないんです」「カレーじゃない」石崎武志はがっかりしたような声をだした。それを聞いた川島美千子は少し笑った。「そんなに気を落とさなくても大丈夫です。『サマンサ・キッチン』はカレー専門店じゃないんです。うちはメニューの多さも自慢だったの。カレーはその中のひとつに過ぎないわ。まだまだ部長が食べた事のことのないものが
    矢口 沙緒 さん作 [373]
  • 魔女の食卓 16

    彼は昼食の時間をいっぱいまで使って、残りのクッキーをゆっくりと堪能した。そして、それを食べ終えた時、彼はとても満たされた思いだった。満腹感ではない。気持ちが満たされたのだ。大きく深呼吸をする。口の中の残り香が淡い余韻となって心地よかった。彼は空になった紙袋を丸めて、ポイとゴミ箱に投げ入れた。そのとたん、満たされたはずの気持ちが、急に不安になった。クッキーはもうない。川島美千子からもらったクッキー
    矢口 沙緒 さん作 [387]
  • 魔女の食卓 15

    時計を見ると、すでに十一時を回っていた。「おっと、もうこんな時間だ。帰らなくては。今日はすっかりご馳走になってしまって。でも、本当に美味しかったよ。じゃ、そろそろ失礼するね。遅くまで悪かったね」「いえ、またいつでも寄ってください」二人は表に出た。石崎武志は車に乗り込み、彼女に軽く手を振り発進した。その車の赤いテールランプが完全に見えなくなるまで、川島美千子はただ一人暗闇の中に立たずんでそれを見て
    矢口 沙緒 さん作 [492]
  • 魔女の食卓 14

    「この店の…」「ええ、そうです。私が物心付いた時には、もう父はなく、母はこの店を一人でやっていました。以来、私は母と二人でここで暮らしていました。ほら、その棚にたくさんのスパイスが並んでるでしょ。そこには世界中のスパイスがあります。店の裏には小さなハーブ園もあるんですよ。少しずつですが、百種類以上の香草を栽培しています。母はスパイスとハーブの使い方がとても上手で、それがこの店の自慢でもあり、『サ
    矢口 沙緒 さん作 [388]
  • 魔女の食卓 13

    川島美千子は一度厨房に引っ込み、すぐに四角い銀色の大きなトレーを運んできた。二皿のカレーライスとスプーン、そして大きめの縦長のグラスには、氷を浮かべた水が入っている。彼女はそれをテーブルに並べると、石崎武志と向かい合って座った。彼の前に置かれたカレールーの色は、ほとんど黒に近かった。「どうぞ、よかったら召し上がって」石崎武志はスプーンを取ると、そのカレーを口に運んだ。それは彼が今まで一度として口
    矢口 沙緒 さん作 [412]
  • 魔女の食卓 12

    そして正面にはカウンターのようなものがあるが、そこに椅子はなかった。そのカウンターの中にドアのない入り口が見え、どうやらその奥が厨房になっているらしい。それほど広い空間ではないので、室内は一目で見渡せたが、川島美千子の姿は見当たらない。その代わりに、カウンターの上に大きな猫が座っていた。綿毛のようにふかふかとした真っ白い猫で、その青い瞳で石崎武志のことをじっと見ている。厨房の奥から川島美千子の声
    矢口 沙緒 さん作 [414]
  • 魔女の食卓 11

    「もうしばらく行くと、左に登る細い別れ道が見えますから、それを入るとすぐです」川島美千子がそう言い終わる頃、うっそうと茂る木々の間に、ヘッドライトに照らされて、やっと車が一台通れる位の細い別れ道が見えた。彼はハンドルをきり、その緩やかな登り道を進んだ。道はすぐに途切れ、森に囲まれた広場に出た。その広場の中央に一軒の家が建っていた。しかし、ヘッドライトに浮かび上がった建物は、家といっても普通の民家
    矢口 沙緒 さん作 [371]
  • 魔女の食卓 10

    山口「そりゃ、そうだけど…」朝倉「そうでしょ、ちょっと騒ぎすぎよ。きっと何かの用事で、たまたま乗せただけよ」戸倉「そうよねぇ、あの二人ができちゃうなんてないわよねぇ、どう考えたって。それにさ、大西麗子がいるもんねぇ、石崎部長には。ちょっと、あんたが変な事言うから混乱するじゃない」山口「あたしはただ目撃した事を正確に発表しただけじゃない。なによ!せっかく目撃してきてあげたのに。…でもさぁ、ひとつだ
    矢口 沙緒 さん作 [407]
 
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