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水無月密さんの投稿された作品が35件見つかりました。
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ベースボール・ラプソディ No.67
指先でまなじりの涙をはらった綾乃は、健気に作り出した笑顔を哲哉にむけた。「恥を忍んで会いにきたのは、一言だけでもちゃんと謝っておきたかったから。 それと、少し気になった事もあったから……」 言葉を濁した綾乃だったが、哲哉を見て少し考えこむと、意を決して切り出した。「結城君にならわかるかもしれない。 真壁君って、投球フォームを変えたのかな?」 唐突な質問に首をかしげる哲哉。「俺とバッテリーをくむよ
水無月密さん作 [1,106] -
ベースボール・ラプソディ No.66
哲哉の問いに、綾乃は何も答えなかった。 彼女の心情を推し量る術などない哲哉であったが、それでも一つだけは明確に理解していた。 綾乃には、誰よりも八雲のそばにいる資格があるのだと。「なあ藤咲、迷惑じゃなければ、俺に八雲との仲を修復させてくれないか?」「……気持ちは嬉しいけど、もう無理だよ」「どうしてさ、さっきの様子なら八雲だってまだ藤咲に好意をもってるはずさ」 励ますように力説する哲哉をよそに、悲
水無月密さん作 [889] -
ベースボール・ラプソディ No.65
不意に背後から言葉をぶつけられ、驚いて振り返る綾乃。 そこには音もなく近づいていた、哲哉の姿があった。「結城君……」「前に振った男が急に注目されだして、今になって惜しくなったのか?」 そう思われても仕方ないと考える綾乃には、哲哉の辛辣な言葉を受け入れるしかなかった。 だが、反論しない綾乃の姿勢が、かえって哲哉を苛立たせることになる。「八雲が必要とした時には冷たくあしらっておいて、今になって言い寄
水無月密さん作 [851] -
流狼-時の彷徨い人-No.76
一つ目の答えはすんなりとでたものの、もう一つの答えに苦慮する半次郎。 だが、答えられない問いかけをノアがするとも思えず、これまでに彼女とかわした言葉の中にその鍵を模索していた。 そしてノアや段蔵のオーバードライブが自分とは違い、発動に何の制限もうけていない事に思慮がおよぶと、すぐに一つの仮定へとたどりつく。「…もう一つはオーバードライブの発動による、身体の崩壊を考慮する必要がない場合」 そう答え
水無月密さん作 [864] -
ベースボール・ラプソディ No.64
「ごめんなさい、私……」 必至に言葉を探しながら切り出した綾乃だったが、上手く言葉を綴れずにいた。 その綾乃に、八雲が無邪気に微笑みかける。「オレは藤咲に感謝してるぜ」「……えっ?」 思いがけない言葉に、綾乃はその意味がわからず聞き返した。「あの時藤咲が突き放してくれなかったら、俺は今でも野球から逃げたままだったかもしれないからな。 だから、藤咲にはすごく感謝しているんだよ」 あの時の想いはつたわ
水無月密さん作 [845] -
流狼-時の彷徨い人-No.75
「虚をついた程度の攻撃が、この人に通用するはずもないか。 …けど、その動きについていく事はできた」 動きについていけるのであれば闘いようはある。 千載一遇ともいえる好機をのがした半次郎だったが、段蔵を見上げるその眼は輝きを失っていなかった。 戦闘体勢をとるべく、立ち上がろうとする半次郎。 この時彼は、自分の身体におきている異変に初めて気付いた。 まるで長時間動き続けたような、全身をおそう倦怠感に。
水無月密さん作 [843] -
ベースボール・ラプソディ No.63
どれくらいの時間をふさぎこんでいたのか、何時しか雪はやみ、気づくと哲哉が傍らに立っていた。「ようやく雪が降り止んんだな」 綾乃が立ち去った方向に視線を向ける哲哉が、世間話でもするように話しかけてきた。「……お前も、俺に野球をやれって言いにきたのか?」 虚ろな眼の八雲に、哲哉は小さくかぶりをふった。「俺はただ、小次郎の言葉を伝えにきただけだ」 顔を上げた八雲に、哲哉は静かに言葉をつづけた。「全国優
水無月密さん作 [884] -
流狼-時の彷徨い人-No.74
『二、三撃で終わらせるつもりだったが、意外としぶといな。 だが、こいつに時間をかけすぎるわけにもいかないか……』 口元をゆがませる段蔵はノアを一瞥した。 圧倒的な力の差を見せ付けたことで、半次郎が認識する限界値は大きく書き換えられたはずである。 あとは放っておいても、この青年は勝手に強くなるであろう。 これより先の戦闘に意味がなくなった今、段蔵の興味は本来の標的であったノアへと、矛先を戻しはじめて
水無月密さん作 [644] -
ベースボール・ラプソディ No.62
綾乃が初めて八雲と出会ったのは、小学校に入学する少し前の頃だった。 その頃の綾乃は親の転勤でこの地を離れる事が決まっていて、大好きな町並みを記憶にとどめておくため、近所を歩き回る事が日課になっていた。 そして通りすがったこの公園で、彼女は野球に興じる兄弟に出会った。 楽しげに遊ぶ兄弟の姿に心ひかれた綾乃は、残され時間をこの公園の片隅ですごした。 月日が流れ、この地に戻ってきた綾乃は、記憶の中で色
水無月密さん作 [713] -
ベースボール・ラプソディ No.61
綾乃自身、自分が笑わなくなった事への自覚があった。 そして、その原因が目の前にいる八雲である事も。「……私と違って、真壁君はよく笑うようになったね」 静かに微笑む綾乃。 八雲は右手に視線をおとし、そして自嘲した。「結局この手は、ボールを握らずにはいられなかったみたいだ。 ……その事に気づいた時には、随分と多くの物を失ってたけどな」 多くのという言葉に、綾乃は妙な違和感を感じていた。 おそらくは、
水無月密さん作 [941]
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