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ゆうこ さんの投稿された作品が102件見つかりました。

 
  • 箱のなか 11

    雅也がいた。暗闇のなか、床に倒れて天井を見上げて。信じられない程の血が辺りを汚し、鉄のような匂いに香月は吐き気が迫るのを感じていながら…電灯に照らし出された雅也から目を離せなかった。大きな硝子に貫かれた胸から溢れた血。ピクリとも動かない目。叫び声をあげた時のまま口が開かれている。雅也は死んでいた。「そんな…」か細い声はしわがれていて、香月の声とは思えない。その声に反応したのか、闇が動いた。部屋の
    ゆうこ さん作 [559]
  • 箱のなか 10

    アズサは、笑った。それは低い声から甲高く耳障りな声になり…暗闇を切り裂いた。「アズサ…」雅也の延ばした手をアズサは振り払った。「アズ、おい…しっかりしろよ…」アズサは笑い…突如、口を閉じた。そして、ゆっくりと部屋を横切り……暗闇に消えた。「…嘘…いや、冗談よ…ね、亮…」香月の途切れ途切れの呟きに、亮は我に返る。「大変だ…香月、雅也、ここにいろ!アズを…連れ戻す!」「いや、僕が行く!…アズサは僕の
    ゆうこ さん作 [521]
  • 箱のなか9

    天使さま 天使さまいらっしゃいましたらこの指に宿り、おろかなる我らを導きたまえ天使さま 天使さま… … 十円はピタリと紙に吸い付いたまま動かない。やっぱりなぁ。亮が見ているのに、恥ずかしいというか…。馬鹿馬鹿しくなり、向かいあったアズサに目を向け…笑いかけた唇が、そのまま凍りついた。アズサの顔がおかしい。目は見開かれ、絶え間無く頬が引き攣っている。唇は半分開いたままで
    ゆうこ さん作 [503]
  • 箱のなか8

    「香月、二階いこっか」 アズサに顔を照らされ、眩しさに顔をしかめる。「階段探そうか…」暗闇のなか、四人は手を取り合って探し始める。月も陰り、電灯の輝きのみを頼りにようやく階段を見つけだす。二階は一階に比べると硝子の残骸が少なく、比較的楽に歩ける。かつては大病院だった面影を残し、広々とした廊下に今は開かずの扉がいくつも並んでいた。とりあえず電灯でプレートを照らしつつ、四人は個人の病室が並んでいると
    ゆうこ さん作 [501]
  • コドモノウタ2

    血飛沫のなかに佇んで…僕はぼんやりしていた。体中を染め上げた血液は温かくて、ねっとりと僕にへばり付く。僕の耳に、誰かの甲高い叫び声が届き…それが僕に向けられたものだと気付くより早く、僕は車内の床に突き倒され、羽交い締めにされていた。屈強な若者がのしかかり息ができない。悲鳴はさらに大きさを増していき、沸いたヤカンのたてる音のように聞こえた。その時、別の誰かが僕の右手に握られていた業務用のカッターを
    ゆうこ さん作 [601]
  • 箱のなか7

    苺の小さなプリントがなされた布。パステルカラーの水色とビビットな苺の赤の取り合わせは、今時の中学生が着るとは思えない。いかにも小学生…しかも低学年が着るような柄だった。「マジかよ。こんなとこに小学生が入ったのか」 「一人じゃなかったんだろうし、夜じゃないのかも…にしたってたいしためんだね」アズサも感心している。異様なくらい目は輝き、いつもの「最高なネタ」を手に入れた時の表情を香月に向けた。「行く
    ゆうこ さん作 [546]
  • 箱のなか6

    ほの暗い街灯が一本、廃病院から少し離れた場所にある。回りに民家はなく、鉄鋼工場と製紙工場に挟まれる形で、柿崎総合病院はその巨大な姿を曝していた。これほど大きな廃病院がなぜ取り壊されずに有り続けるのか、というミステリーを、一年ほど前にミスオカ倶楽部で特集したのだ。アズサと一緒にかなり聞き込みをし、わかったのは…話の種にもならない大人の事情だった。噂によると工場中に作業員が何人も怪我をして、呪われて
    ゆうこ さん作 [578]
  • 箱のなか5

    「なぁに赤くなってんのよ〜」アズサはニヤついて香月の腕を引っ張る。「鬼編集長の癖に〜可愛い!」「ちょっと、やめてよ!馬鹿アズサ」はしゃぎあう二人に雅也と亮は呆れたようについていく。初夏の風は、まだ涼しくかなり薄着の香月には肌寒いくらいだった。アズサはちゃっかり薄手のパーカーを羽織り、いつも持ち歩いている大きなオレンジ色の手提げを持っている。いつもパンパンな手提げの中身は彼女いわく「必要最低限」な
    ゆうこ さん作 [528]
  • 箱のなか4

    上杉雅也はアズサの強引な誘いに嫌な顔ひとつせずにニコッと笑った。天野亮は「マジかよ…」と嫌そうにしながらも、結局、香月を心配して来てくれていた。「亮ってば怖いんじゃないの?かっこつけだけどこういうの苦手そうだもんね」とアズサが笑う。「俺はお前と違ってデリケートなの」PM9・00日はとっくに落ち、アズサの持つ懐中電灯の明かりが眩しい。「アズサ、あんまり無駄使いしないでよ」ごめん、と笑ってアズサはス
    ゆうこ さん作 [580]
  • 箱のなか3

    「私達だけであそこ行くのは…やばくない?さすがに」午後6時。二人はアズサの家でミーティングしていた。といっても片手にはスナック菓子、もう片方にはコーラ、というリラックスしきったものだったが。しかし……。毎度ここにくると香月は驚きを隠せない。家の至る所にゴミや洗濯物が落ちている。読まれた雑誌は開きっぱなしで庄子は張らない方がいいくらい黄ばんでいる。つまり、呆れるくらい汚いのだ…家、全体が。辺りを見
    ゆうこ さん作 [548]
 
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