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金田七耕助 さんの投稿された作品が35件見つかりました。
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ある泥棒
ある泥棒が空き巣に入ったが、何も盗る物がないばかりか、飢えた幼児が泣いていたので、持っていたおにぎりを食わせてやり、千円札を一枚置いていった。 指紋から足がついて、三日後に逮捕された。 しかし、心意気を刑事にホメられ、生まれて初めて人にホメられた感激にうち震え、以後、汗水たらして真面目に働き、余った金の半分は寄付するようになった。 二十年後には大邸宅に住むまでになった。 そこに泥棒が入った。見
金田七耕助 さん作 [543] -
緑の惑星.5
地球に帰還して直ぐの一週間は観察室に入り、宇宙から病原菌等を持ち込んでいないか、病気にかかってないかを検査し、三人とも問題なしということで自由になった。そこから更に三日間は、緑の惑星から採取した苔類や岩石の保存方法について研究班と協議し、またマスコミからも説明を求められたが、よく分からないということで通した。 その後、三人ともそれぞれ、待ち受けている家族や知人とともに、郊外の自宅に帰り、のんび
金田七耕助 さん作 [510] -
緑の惑星.4
私は、宇宙船の地球大気圏突入を前に、思い切って、コックピットに並んで座っている緑惑星人に、質問した。「地球を調べる目的はなんだ?」 偽アイザックが答えた。「いずれ分かる事だから、本当の事を言っておこう。我々は、以前から地球人の情報を、大まかだが得ている。地球人は無知な者の集まりで、自然の一部であることを忘れ自然を離れ、将来公害や核戦争で、地球自体の生命体を死滅させるばかりか、他の惑星にまで被害
金田七耕助 さん作 [511] -
緑の惑星.3
緑惑星人に遭遇してからの出来事は命懸けだったので、記憶も曖昧で意識もぼんやりしていた。正常な思考力を取り戻したのは、地球帰還の宇宙船に乗り込み、自動制御システムに切り替え、何時間か睡眠をとった後のことである。 サボテンの怪物に襲われた直後の記憶が甦ってきた。二人の飛行士、アイザックとリチャードの全身に奴らの無数の白い根が突き刺さり、そこから遺伝子や記憶といった情報を取得していたようだ。そのとき
金田七耕助 さん作 [477] -
緑の惑星,2
未知の生物の出現に、我々三人は警戒しながら、少しずつ前進して行った。念のために、それぞれ手にはレーザー銃を持った。 近づくにつれて、それは人間あるいは動物ではなく、サボテンのような植物らしいことが分かってきた。高さ2メートル位で、手足を広げたような枝があるために、人のように見えたのだろうか。 しかし、確かに歩いているように見えたのに、不思議だ。どんな錯覚がありうるというのか。それに、他には同じ
金田七耕助 さん作 [563] -
緑の惑星.1
地球まで帰るには、後二ヵ月はかかる。 この宇宙船の燃料は太陽電池で何とかなるとしても、乗組員三人分の食料は残り一週間分しかない。 丁度その時、右前方に、大気反応のある、緑色の惑星が見えてきた。 二人の乗組員に相談し、食料確保以前に、生命体の発見につながる可能性もあるので、着陸を決定した。 平らな岩盤上に着陸してから、船外に出て調べたところ、緑に見えたのは地表に張りついたコケ類で、草木や果実は無
金田七耕助 さん作 [622] -
アリとセミ
セミの鳴き声だけが響く林で、ダンテがミゲルに言った。 「紀元前580年頃、古代ギリシャでイソップか書いた童話に、こんなのがあるね。『 冬になり食料のなくなったセミが、食料を充分に貯蔵しているアリに、夏の間働かず歌ってばかりいたら、冬になって食物がありません。少し分けてくれませんか?と言ったら、アリが、夏の間歌っていたなら、冬には踊っていればいいだろう、と答えた。しばらくして、セミは力尽き息
金田七耕助 さん作 [561] -
タイムマシーン
やっと、テレビの電波が傍受出来た。小型テレビにはニュースが映っていた。 事件事故等一つもなく、人々の楽しそうな様子ばかりが報じられている。 様々な番組を見ていて気が付いたのだが、この時代に老人の姿はなく、みんな若く健康的だ。貧しい人もいない様子だ。 すると、ついに人類は不老不死の薬を発明したのか。 ここは西暦3500年の地球。俺は数時間前にタイムマシーンで、2007年の時代からやってきたばかり
金田七耕助 さん作 [646] -
仇討ち
四月になっても、山深い峠道には、所々残雪がある。 日が射していても、吹く風は冷たい。 そんな風に吹かれながら、旅姿の若い侍が現われた。先を見ると、商人風の中年男が一人、道端の丸太に腰掛け一服している。 若者は会釈をすると、その隣に少し間をあけて、腰掛けた。 お互い山の下や遠くの山頂を眺めていたが、時間が経つと、少しずつ会話が成り立ってきた。 軽い会話の途中、中年男が若者の近くに座り直し、打ち明
金田七耕助 さん作 [741] -
降臨
霧深い早朝、町を見下ろす小高い丘の頂上は、一層深い霧に覆われていたが、その薄暗い空中に二つの黒い影が現れ、静かに地上に降り立った。 全身黒装束の二人は、よく似た兄妹で、静かに顔を見合わせただけで、別々の小道を歩き、山の反対側を下っていった。 霧の中から別々の町に現れた時には、それぞれ普通の小綺麗な服装を身につけていた。 彼らは、その優れた知恵で社会に溶け込み、数ヵ月後にはすでに認められた存在に
金田七耕助 さん作 [625]