トップページ >> 紗弥佳 さんの一覧
紗弥佳 さんの投稿された作品が53件見つかりました。
-
角砂糖が溶けていくように???
あの夏期講習最終日の前日。あの日が無かったら今の真夜中のこの部屋にいる僕たちは、伝えたかった言葉を今、伝えた僕は居なかっただろう。相も変わらず僕は、最終日に向けて授業の作戦を練っていた。夏期講習最終日の五日後、生徒たちにはこの進学塾内での全体模試が待っている。僕が受け持つ中学三年生の優秀な生徒を集めた一クラスの数学の成績が落ち込むような事が有れば、僕の指導に足りないところがあった事となり、僕はこ
紗弥佳 さん作 [359] -
Cube sugar report vol.1 〜角砂糖通信vol.1〜
皆様、ごきげんよう♪紗弥佳です。ごきげんよう、なんて入り方して申し訳御座いません。私の中でブームなのです、会社内でもお疲れさまの代わりに「それでは皆様、ごきげんよう。」と許される範囲で使用中。この、ごきげんよう。時間にとらわれないのが好きです。脱線しました。申し訳御座いません。いただいたご感想にお返事させていただきます♪?にご感想をお寄せ下さった、明様。切なくて綺麗な作品にしていきたいと思ってお
紗弥佳 さん作 [374] -
Cube sugar report vol.0 〜角砂糖通信vol.0〜
初めまして。ご挨拶が遅れました、紗弥佳と申します。「角砂糖が溶けていくように」をこちらに掲載させて頂かせております。書き始めて、一週間強。ご閲覧、ご投票、ご感想を賜り、誠に有り難う御座います。これからはこちら「角砂糖通信」にて、頂いたご感想へのお返事や、もしかしたら作品解説(解説と書いて、言い訳と読む場合もあります(笑))、補足説明(これも言い訳っていいますね(^^;))などなど、「角砂糖〜」は
紗弥佳 さん作 [511] -
角砂糖が溶けていくように??
終業のベルが鳴った。僕は何とか授業をしめた。「では、明日も小テストを五分間するのできちんと復習しておいてください。お疲れさま。」三人組は早速、今日の僕の板書の解説を書き写したノートを囲んで談笑しだす。「今日の先輩はなかなかでしたねぇ。」僕が聞いている、いないは関係なしだ。「藍田さん、坂口安吾読んでるんだね。」梨花も他の生徒たち同様、帰り支度をしていた。僕は、最前列左端の梨花の席近くの板書を消しな
紗弥佳 さん作 [442] -
角砂糖が溶けていくように??
ドアをあけると教室は急に静かになった。教壇に立つと、藍田(あいだ)なので最前列の左端に座っている梨花が、読んでいた坂口安吾をさっとしまう。「桜の森の満開の下」だった。夏期講習の授業はあと三回だ。授業の作戦を必死で練る以外に、必死で慣れない小説を読んだ。通常の授業に戻れば僕は一コマ目なので梨花に話しかけることは出来なかった。夏期講習中は最後のコマだから終わったあとにさり気なく話しかける機会があった
紗弥佳 さん作 [361] -
角砂糖が溶けていくように??
効きすぎているエアコンの冷たい空気と何となく黴臭い匂い。夏期講習が始まって、授業は夕方から夜にかけてではなく、一日中になった。中学三年生の一つのクラス数学だけを担当していた僕も学生のアルバイトとは言え、毎日スーツを着て出勤していた。次の日の授業のために職員室の自分の机で、準備をする。成績が優秀な生徒を集めたクラスなので、かなり入念に解説やその板書をどうするのかを練らなければならなかった。作戦を練
紗弥佳 さん作 [362] -
角砂糖が溶けていくように ??
梨花と何か話すきっかけが欲しかった。その時の僕は単純に、妹くらいの年齢の女の子がまわりの他の女の子のように、友達と他愛ないおしゃべりをして笑っている姿を見せない梨花をどこか心配に思い、余計なお世話だと思われても、そういう姿を見せて欲しかった。僕には梨花と同じ歳の妹がいて、その妹と全然違う梨花を何とかしてあげたいと思った。今思えば、多分それだけじゃない。正直に言えば、綺麗な女の子の笑顔を引き出した
紗弥佳 さん作 [396] -
角砂糖が溶けていくように ??
カフェオレに角砂糖が落ちていく音を僕が好きだ、と話したとき、「いい音。」と言ってくれたときの僕が好きな焼きたてのスポンジケーキみたいにふわふわの柔らかい梨花の笑顔を初めて見たときから、もっとその笑顔を見せて欲しくて、ずっと見ていたいと思った。梨花の笑顔をみるまでには、長い時間がかかった。梨花という女の子の存在を知ってから、初めてふたりでカフェで話をするまでに四年の時間が流れていた。初めて梨花を見
紗弥佳 さん作 [399] -
角砂糖が溶けていくように ??
開け放たれた窓から入ってくる夏が終わって秋になろうとしている真夜中の風と、電気を消して街灯の光が冷たく白い街灯の光が闇と混ざって焔青い部屋。涙を手で拭いながら、梨花は僕に背を向けて窓の外に目を遣った。「本当の笑顔を私にくれたのは淳だから、ずっと淳の隣で笑顔でいられたらいいと思ってるよ。」そう言った梨花の声は、さっきまで涙を流して、悲しそうに弱く頷いていたとは思えないような、芯のある声だった。「ず
紗弥佳 さん作 [402] -
角砂糖が溶けていくように ??
「少し泣いてた?」訊くべきかどうかためらったけれども、涙の理由が分かって僕がどうにかできればと思いきって訊いてみる。「うん。」梨花は、意外にも笑顔をくずさないで答えてくれた。「眠れなくてね、コーヒーを沸かしながら外をみてたの。」熱いコーヒーの中で、砂糖がとろとろとゆっくり溶けていくみたいに梨花はゆっくりと話し始める。「外がね、しーんと静かで、でも街灯ははっきり白く光ってて暗い道をてらしているでし
紗弥佳 さん作 [600]