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麻呂さんの投稿された作品が616件見つかりました。
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チンゲンサイ。<43>
ユキエの事を、元々、積極的なタイプではないと分かっているだけに、今、この場で、ユウのクラスメイト達、約40人の前で、発言しようとしている妻の事が、俺は内心、心配でたまらなかった。横目でチラリと見た妻の横顔は、むしろ自信に満ち溢れていた。俺は、自分の知らない妻の姿を、垣間見た気がした。
麻呂 さん作 [430] -
チンゲンサイ。<42>
意外にも本橋は、ユキエの言葉を受けても、表情一つ変えずに、あっさりと要求に応じた。『山田さん。生徒達に何をおっしゃるおつもりなのかは分かりませんが、親が前へ出る事によって、必ずしも解決に結び付くとは限りませんし、もしも、うちのクラスにイジメがあるとしたら、現状の悪化さえ考えられますよ。本当に、それでいいとおっしゃるのなら、どうぞお話しください。』俺達の意志は固かった――本橋の後ろに付き、俺とユキ
麻呂 さん作 [426] -
チンゲンサイ。<41>
『本橋先生。先生にも、子供を持つ親の気持ちはお分かりですよね?!』ユキエの、ぶしつけな質問には、隣に座る俺の方が驚いた。そもそもユキエは、こういう場面で自分の意見を積極的に述べるような女ではない。どちらかと言えば、引っ込み思案なタイプだ。『ほっほっほ。そうですね。私にも2人の子供がおりますから。』本橋は動じる事無く、ユキエが一体何を言いたいのか、全てを見透かしているかのように、話している間中、ず
麻呂 さん作 [468] -
チンゲンサイ。<40>
* * * * * *学校に着くと、俺達夫婦は、まず始めに職員室へ向かい、ユウの担任の本橋と言う教師に挨拶をした。『山田ユウの親です。うちの息子がいつもお世話になっております。』『いえいえこちらこそ―――』40手前の俺より、遥かに年上に見えるその男は、おそらく教師という職業ではベテランの域に達しているのだろう。突然の、教え子の保護者の訪問にも、全く動揺する事もなく、落ち着いた表情で、俺達夫婦を来
麻呂 さん作 [454] -
チンゲンサイ。<39>
* * * * * *翌朝――あまりよく眠れなかったにしては目覚めは悪くなかった。むしろ、頭がいつもよりスッキリしている。時計を見れば、午前5時半。家族4人揃って朝食を食べる習慣など、全く無かった我が家だが、ユキエも今朝は緊張して早くに目覚めたのか、キッチンから、カチャカチャと食器の音が聞こえてくる。リョウの弁当でも作っているのだろう。今日は、ユウを学校を休ませるつもりではいるが、リョウもまだ寝
麻呂 さん作 [577] -
チンゲンサイ。<38>
『‥‥さっきは、母さんに向かって暴言吐いたり、コップを投げつけたりしてごめん‥‥‥。それと‥‥財布から抜き取ったお金は‥‥‥出世払いで必ず返すから‥‥‥。』椅子に座ったまま、ボソボソと、うつむきながら話している我が子を見て、ユキエは愛おしく感じたのか、今では自分よりも遥かに背が高くなって、たくましくなった我が子をギュッと抱き締めた。『悩みがあるなら、お父さんとお母さんに何でも言っていいんだよ‥‥
麻呂 さん作 [516] -
チンゲンサイ。<37>
* * * * * *タクシーで家の前に着くと、ユキエが玄関先で出迎えてくれ、俺とユウの腫れた顔を見ると、驚いた様子だったが、何も聞かずに、黙って傷の手当てをしてくれた。『ぷっ‥‥‥。2人揃って顔腫らして‥‥‥‥。』先に俺よりひどい、ユウの顔の傷の手当てをしながら、ユキエが言った。消毒液が傷口にしみるのか、しかめっ面をしているユウに、ユキエが優しく手当てをしている。さっき、ユキエに向かって、水の
麻呂 さん作 [528] -
チンゲンサイ。<36>
その顔は、子供だった。生意気な言葉を吐く様な子ではなかった、少し前の素直なユウの顔に戻っていた。ユウの口から、全てを知ってしまった以上、親として、このまま黙っては、おけない。子供同士の問題に、下手に親がしゃしゃり出ると、かえって厄介な事になる。しかし、ユウの場合、金銭を要求されるなど、決して、放っておける問題ではない。ユウのイジメを受けている姿と、自分が会社を辞めるまでの間、上司やパートのババァ
麻呂 さん作 [486] -
チンゲンサイ。<35>
ラーメンをすすりながら俺は、さっきの話の続きをユウに尋ねる事にした。『ユウ。さっきの話の続きだが‥‥。イジメられてるって一体どんな事をされてるんだ!?』ラーメンをすする顔を上げ、向かい側に座る俺に視線を合わせると、ユウは、静かにゆっくりと口を開いた。『もういいだろ。親父に言っても、今の状況が変わる訳じゃないし。』そう言って、俺から視線を外したユウに、俺は、更にイジメについて問いただした。『なぁユ
麻呂 さん作 [461] -
チンゲンサイ。<34>
『はい。お待ちどうさま!!』店主は、俺達が注文した品をテーブルへ置くと、眠そうな目をして、次の客の対応をしていた。『ユウ。冷めないうちに食べなさい。ギョーザは、6個あるうちの1個を父さんにくれ。』『そう言えば親父‥‥金、大丈夫?!さっきのタクシー代とかも、何であんの?!財布の中身全部、盗られちゃったじゃん?!』キョトンとした顔で俺の顔を見つめるユウの、その表情を見て、なぜか少し、ホッとした。まだ
麻呂 さん作 [468]