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阿部和義 さんの投稿された作品が82件見つかりました。
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遺言 (2)
「続きは無いのか……」 耐えきれなくなった次男が口を開いた。 「親父はいつも、俺たちを驚かせるのが好きだったけれど……」 「ちょっと待って」 三男があることを思い出した。 「確かカセットテープを使った遺言は無効なはずだよ」 「本当か」 「そういえば、前にテレビでそんなことを言っていたな」 「ああ良かった。無効だ、無効」 「じゃあ、仲良く一千万ずつ分けよう」 兄弟達は遺産を三等分することで納
阿部和義 さん作 [464] -
遺言 (1)
「遺産はどうなるのかな」 「まあ、三等分だろうな」 「遺産がそんなにたくさんあるとは思えないけどね……」 父親の葬式も終わり、三人の兄弟が遺産について話し合っているところへ、父親の弟、つまり彼らの叔父が入ってきた。 「葬式が終わったら、これを再生してくれって……。兄さんの遺言かもしれない」 そう言って差し出したのは、一本のカセットテープ。家族を集めて、さっそく再生してみる。 『……えー、わし
阿部和義 さん作 [421] -
幽霊
人間本当に怖いと声も出なくなる。 冷や汗が体中から吹き出した。洗濯機の中に髪の毛がぎっしり詰まっていたのだ。 「畜生」 自分を奮い立たせて、再び洗濯機の蓋を開けるとそこには何もなかった。 俺の背後のバスタブでなにか大きな物が跳ねた。 もう確かめるのも嫌だ。 俺は振り向かずに朝食を作るため台所へ向かった。焼き魚にしようと思って魚を見ると見るも無残に腐っている。昨日買ったばかりなのに……
阿部和義 さん作 [1,074] -
鈍感
「アンタ、鈍感すぎ」 俗に言う出来ちゃった結婚と、出産を済ませた直後に単身赴任になった僕を、君は何年経っても罵り最後に決まってこう言う。 確かに僕は鈍感だったに違いない。 悪い結婚を見抜けずに深みにはまっているのだから。 でも君は鈍い男が好みなんだろう。 四十歳近いのに恐ろしくサバを読み、絵文字をびっしり使ってさ。 その相手もさぞかし「鈍感」なんだろうな。 可笑しくなって
阿部和義 さん作 [667] -
Whatever (4)
エリカの自宅は、街はずれの公団住宅の一室にあった。十二月にしては暖かい日の夕暮れに、エリカの案内でやってきた団地は所々がライトアップされ、早くもクリスマスモードに染まっていた。 玄関の重たいドアを開けた瞬間、我が目に飛び込んできたのは非情な現実だった。同時に宗教は全く信じない僕でさえも、神様どうか何かの間違いであって欲しい! と祈らずにはいられなかった。 目の前にいたのはエリカの母親トモミ、そ
阿部和義 さん作 [478] -
Whatever (3)
エリカとは不思議と気が合った。口説き文句ではよく聞くけれども、初めて会ったはずなのにずっと前から一緒にいたみたいな感覚って、こういうのを言うのだろう。 唯一意見が合わなかったのはOasisの最高傑作は1stか、2ndかという他愛のないものだったし、二人の間に年の差なんて関係なくなっていった。父親のいないエリカにとって、僕は恰好の相手だったのかもしれない。 次第に元彼女の面影を見ることもなく
阿部和義 さん作 [456] -
Whatever (2)
女性と二人だけで会うなんて何年ぶりだろう。元彼女と別れてから十八年が経っていた。元彼女とは酷い別れ方をしていたこともあって、なかなか次の恋に踏みきれないでいる。 そんな感慨にふけっていると、メール着信音に設定していた『Whatever』のメロディで我に返った。エリカは近くまで来ているらしい。 それらしい服装の女性が大きく手を振っている。 一瞬我が目を疑った。 その女性は元彼女に似ていた
阿部和義 さん作 [458] -
Whatever (1)
エリカとの出会いはブログだった。 僕の書いてる音楽ブログにコメントしてきたのがきっかけだ。 始めて三年になるけれど、人気ブログというわけでもなく、ただ音楽知識をひけらかしてるだけのこんなブログにコメントしてくるなんて変わった子だなと思った。 特にOasisの記事を書くと反応がよかったし、次第にエリカに興味を抱き始めたていた頃、お互い同じ日のサマーソニックのチケットを持っていることがわかっ
阿部和義 さん作 [525] -
悪夢 (2)
日は母さんの命日だと言っていたな。「義母さんが亡くなったのって……」「そうね……結局、犯人は捕まらなかったけれど……」 やはり殺されていた。 誰かが由実の母親を殺害したおかげで、俺たちは結婚することができた。そして、二人の子宝にも恵まれ幸せな生活をおくっているのか。 でもいったい誰が? まさか俺?! そんなことはない! 二十年前に戻るなんてできるわけないじゃないか!! それならなぜ……「起きろ!
阿部和義 さん作 [580] -
冷凍保存
「おい。この魚、賞味期限明日までだぞ!」 「冷凍するから大丈夫よ」 「この肉も、賞味期限明日じゃないか!」 「冷凍しちゃえば大丈夫よ」 「……申し上げ難いことなのですが、ご主人の余命はあと3ヶ月なんです」 「そうですか……」 「いやぁ、今日は暑いな」 「あなた。マイナス40度の世界を体験してみたくない?」
阿部和義 さん作 [863]