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沖田 穂波 さんの投稿された作品が90件見つかりました。

 
  • アオイ,そら。3

    1-3 悲しき蒼。私は走って多哀の後を追いかけた。校内なら充分に追いつける。筈なのに‥。ーおかしい。多哀の姿がどこにも見当たらない。既に校外へ出ているのだろうか。だとしたら,奴は相当足が速い。それも超人的に。ますます怪しい奴だ。それでも諦めきれない私は,学校を出て怠慢通りへと向かった。何となく,そこに奴は居そうな気がしたのだ。予想は的中した。だけど,居たのは多哀だけではなかった。『金出せコラァ!
    沖田 穂波 さん作 [668]
  • アオイ、そら。2

    1-2 悲しき蒼『多哀,お前は何者だ。』私は朝登校するなり,一人読書する多哀の前に仁王立ちに立った。多哀は,一瞬たりとも本から視線を外さない。シカトと言うやつだ。『おい答えろ。多哀蒼。』私は多哀の読んでいた本を取り上げた。その時,手が滑ってその本が鈍い音を立てて床に落下した。教室に居た皆が一斉に私と多哀に注目した。【君の様な人間には興味ないよ。】奴にこんな事を言われ,昨日から少し苛立っていたのだ
    沖田 穂波 さん作 [752]
  • アオイ、そら。

    『アオイ、そら。』私,下内反実(かないそらみ)の通う高校はクラス替えがない。だから高校生活三年目にもなると,クラスメートの人柄や性格が手に取るように分かる。未だ,ただ1人,多哀蒼(たかなしあおい)を除いては。1-1 悲しき蒼多哀蒼。一年の頃から友達もいなくて地味な存在だった。いじめなどではない。アイツは自ら自分を塞ぎ込んで,人と関わる事を拒んでいる様に見えた。だから私は,それまで多哀とは一度も言
    沖田 穂波 さん作 [830]
  • 人斬りの花 完

    8出愛冬。平太と椿の死んだ場所には何事もなかったかのように,太陽の光が差し込んでいる。そこを,恋仲の男女が通った。女がふと立ち止まり,地面に埋もれていた何かを拾いあげた。それは,あの椿の髪飾りだった。二人はそれを見ながら少し話をすると,やがて側にあった椿の木に付けた。椿の花と同じ色。鮮やかで美しいそれが,太陽の光で反射して,きらり,きらりと光った。≠≠終わり≠≠
    沖田 穂波 さん作 [432]
  • 人斬りの花 37

    7-6 心路つ力の抜けて行く椿を,抄司郎はしばらく抱いていた。歪む視界には,おぞましく赤黒い血しか映らない。抄司郎はやっと息絶えた椿をはなした。皮肉にも死に顔までもが美しく,少し微笑んでいるかのように見えた。『‥椿。』震える手は悲しみからなのか,怒りからなのか,もはや分からなかった。『お前にしては珍しく随分と愛していたんだね,その女の事を。』平太が人事に言った。誰が死のうが今の平太にはどうだって
    沖田 穂波 さん作 [401]
  • 人斬りの花 36

    7-5 心路つ『どうした,手も足も出ないか。』余裕の平太は言った。抄司郎は素早く身を引いて,中段に構えた。平太の出る隙をうかがい弱点を探った。しかしそれよりも,平太の動きの方が速かった。一瞬で間合いに入ったかと思うと,既に頭上には平太の刃があった。ー 死ぬ‥!!抄司郎は地面に倒れ込んだ。それと同時に大量の血が舞った。『何故邪魔をする!!』平太の怒鳴りつける声が聞こえた。抄司郎は強く瞑っていた目を
    沖田 穂波 さん作 [378]
  • 人斬りの花 35

    7-4 心路つ『抄司郎‥,』平太はそんな抄司郎の姿を見て,一瞬申し訳ないと言う顔を見せたが,すぐに不気味な微笑みを浮かべた。『全てその通りだ。お前は相変わらず勘が鋭いな。』『やはり。何故武部と‥。』平太は顔を歪めた。『そういえばお前とは,幼少からの付き合いだったなぁ。読み書きも剣も,同じ場所,同じ時期,同じ師匠に教わり,兄弟同然の様に育てられた。』『‥ああ,実力に差もなかった筈だ。』『違う!!』
    沖田 穂波 さん作 [375]
  • 人斬りの花 34

    7-3 心路つ『その時の私の命令はこうでした。親子共々斬れ。だが抄司郎は盲目だった当時のあなたに同情してしまったのです。だから,しくじった。人斬りに余計な感情は要らないのです。』『そんな‥』震え出した椿などお構いなしに,武部は話し続ける。『しかしあなたの目が治った今,再び抄司郎は,五年前の命を果たそうとしています。』『嘘‥!』椿の目から悲痛の涙が溢れ出た。『嘘ではありません。現にあなたの側に、抄
    沖田 穂波 さん作 [377]
  • 人斬りの花 32

    7-1 心路つ長い夜が明けた。抄司郎は朝の光で目を覚ました。隣には椿がまだ小さな寝息をたてている。椿を起こさぬようにそっと起き上がり,着物を身にまとった。― 夢ばかり見ていられない。抄司郎にはやらねばならないことがあった。師匠が死んだあの日,武部の手下がこの場所を知る筈がなかった。つまり,場所を知る者が裏切り密告した事になる。何かの間違いであって欲しいと,抄司郎は願わずにはいられなかった。『‥抄
    沖田 穂波 さん作 [431]
  • 人斬りの花 31

    6 椿へ椿。お前がこの文を読んでいる頃には,父はもうこの世には居ないだろう。誰も恨み憎しむのではない。私の,自業自得なのだ。お前は責任感の強い子だから,父が今死ぬ事すらも,自分のせいだと思っているのだろう。お前の責任など少しも無いのに,時折見せる思い詰めたような表情を見る度に,私の心は酷く痛んだ。お前の笑顔を奪ってきたのは,この父だったと思い知ったのだ。本当にすまなかった。お前の幸せは,父の側に
    沖田 穂波 さん作 [422]
 
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