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沖田 穂波 さんの投稿された作品が90件見つかりました。
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○●純+粋な恋●?
3-? 初夏の路『師匠ぉ!!』凄い勢いで,部屋に生徒が駆け込んできた。それは紛れもなく,粋乃の弟,拓和だ。『おやおや,元気ですねぇ拓和は。1人で来たのですか?』純は拓和の頭を撫でた。昔から純は子供が好きなのだ。『ううん,姉さんと一緒に来た!!』『お姉さんと?』『こら拓和!!挨拶も無しに失礼でしょう!!』遅れて拓和の姉,粋乃が入ってきた。『拓和が,いつもお世話になっております。』粋乃は手をついて丁
沖田 穂波 さん作 [520] -
○●純+粋な恋●?
3-? 初夏の路純の生徒が家を訪ねてきたのは夕方の事である。日が延びたせいか,太陽はまだ顔を見せている。『純,生徒が見舞いに来たが‥どうする?』京太郎が純の部屋の襖をガラリと開けた。純は目覚めた時と同じように横になっている。『生徒?誰だろう,通して下さい。』即答した。『だがお前,大丈夫なのか?体の方は。』京太郎は出来るだけ純に安静にしていて欲しかった。ー 再び血など吐いたら,純は死ぬのではないか
沖田 穂波 さん作 [530] -
○●純+粋な恋●?
2-? 春の陰粋乃の弟,拓和の通う,書道教室が長期休業となったのは,純と桜並木で出会った,3日後の事である。どうやら師匠の体調が悪いらしい。拓和は,楽しみが1つ減ってご機嫌斜めだ。『書道行きたいよぉ。』拓和は何度もダダをこねた。『そんな事言ったって,しょうがないでしょう。師匠の体の具合が悪いのだから。』粋乃は,拓和を抑えこもうとしたが,なかなか諦めてくれない。ついに,しびれを切らして粋乃は立ち上
沖田 穂波 さん作 [500] -
○●純+粋な恋●?
2-? 春の陰女の名は,階堂粋乃(いくの)と言う。階堂家と言えば,ここらでは古くから続く名家として知られている。その粋乃は,今日も桜並木の墓を訪れていた。純は,今日も来ない。『あ,姉さんこんなとこにいた!!』粋乃の弟,拓和(たくお)は桜の木の陰からひょっこりと顔を出した。『あっ!こら!書道教室はどうしたの?遅れたら,師匠が怒るわよ?』粋乃は,この7才の幼い弟を優しく叱った。『分かってるよぉ,もう
沖田 穂波 さん作 [490] -
○●純+粋な恋●?
2-? 春の陰その日は,朝から体がだるかった。― 風邪かな?純はそう思ったが,教室を楽しみにしている子供達の為にも,休む訳にはいかなかった。最後の子供を帰した後,少し後悔した。体調が悪かった為,子供達の話をちゃんと聞いてあげられなかったのだ。子供達は,書道より純と話す事を何よりも楽しみにしている。悪い事をしたと,純は申し訳なさでいっぱいだった。今日はさすがに散歩へは行かなかった。桜並木の女の事が
沖田 穂波 さん作 [634] -
○●純+粋な恋●?
2-? 春の陰『純,今日は何かあったのか?』純の兄,京太郎は尋ねた。純は何を書くでもなく,上の空でただ墨を擦り続けている。『え,ぁ,はい,』純ははっと我に返った。『今日,裏の桜並木で,とても心優しい方に出会ったのです。』『心優しい?』京太郎はあぐらをかき,顎に手を当てた。純の話を聞く時,いつもこの体勢をとる。『はい,その方は,一匹の小さなツバメのヒナの為に,墓を作っていたのです。』『ほぉ‥』京太
沖田 穂波 さん作 [559] -
○●純+粋な恋●?
1-? 春の墓純は,ぼんやりともと来た道を歩いていた。女とのさっきの出来事が何度も思い出される。『また,この場所へ来ますか?』女は別れ際に呟いた。『あの,良かったら‥』思い切った様に女は言った。『また,私と会って下さいませんか?』女の顔は日が沈んでいて良く見えない。純は,自分に?と小首を傾げた。しかし,単純にまたこの心優しい女に会いたいと思ったので,『ええ,来ます。必ず。』と,答えた。答えを聞く
沖田 穂波 さん作 [567] -
○●純+粋な恋●?
1-? 春の墓純の頭は,まだ上がらない。女は,やっと探した言葉で言った。『あなたが初めてです。真剣に,私の話を聞いてくれたのは‥。しかも理解までしようとしてくれて‥。私は,それだけで充分ですよ。』『理解,しました。』純は顔を上げ真っ直ぐに女を見た。『存在する命,そして,あなたが優しさに溢れる人だって事。』純は微笑んだ。『これでも,私は理解が早い方なんです。』女はこの若い男に度肝を抜かれた様な気が
沖田 穂波 さん作 [543] -
○●純+粋な恋●?
1-? 春の墓『私も, 手伝いましょう。』純は,女の横に座り込んだ。女は思いがけないと言う顔でこの若い男を見た。男は既に腕捲りし,堀かけの穴を掘り始めている。『あの‥。』『何でしょう?』『‥どうして?』女は率直な疑問をぶつけた。若い男が見ず知らずの人を手伝うなど現代にして珍しい事だ。ましてやツバメのヒナの墓作りなど‥純は複雑な顔をした。『どうしてと言われて も‥ただ,お手伝いし たかったのです。
沖田 穂波 さん作 [602] -
○●純+粋な恋●?
純+粋な恋1-?[春の墓]春らしい暖かい日の光は,八畳ほどの和室を明るく照らしていた。机が並べられ,それぞれの場所で子供が習字に熱中している。1人の子供が,たった今書き終えたばかりと思われる物を,何か楽しげな様子で若い男の元へ持って行った。『師匠,見てみて! 隣の家の猫描いたよ』そこには半紙一面にいびつな猫の顔が。若い男はそれを見て柔らかく微笑み,『これはこれは, そっくりですねぇ, とても,上
沖田 穂波 さん作 [734]