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うー さんの投稿された作品が19件見つかりました。

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  • 纏わり付くもの[終]

    サラリーマンだった私。毎日上司に罵倒され、それでも上からの命令は絶対だった。間違ったことにも「はい」と首肯し、意見主張など微塵も通らない。ペンテルのカラス。まるで軍事主義の名残を残した社会。権力の前で私の精神は参ってしまっていた。そして逃げ込んだのが此処だった。しかし、ぶざまなすぎる今の状況。屈辱でしかない。強行手段を取れば益々事態は悪化するだろう。なにもできない自分が惨めであった。薄暗くなって
    ゆうた さん作 [397]
  • 纏わり付くもの?

    なにやらひそひそと誰かが誰かに指示する声が聞こえてきた。「…ベッドに縛りつけて…」私はベッドにいた。仰向けにされた昆虫のように、もがいてももがいても解決策がない。四肢は太い紐できつく締められ、ご丁寧に鍵付きのものだ。きつく締めらたれた紐の下で波打つ鼓動が感じられた。ほとんど規則的で、それは脅迫的なものに思えた。なにもない天井を眺めながら、私は鼓動をひとつひとつ数えていた。数えながらここに来るまで
    ゆうた さん作 [402]
  • 纏わり付くもの?

    騒ぎ立てる大きな物音を聞き付け4、5人の看護士共が駆け付けた。それでも狂気は治まることはなく、床に血を滴らせながら、さらに拳の傷を拡張させていく。一時間くらいあがいただろうか。荒げた息は興奮によるものだけでなく、疲弊を伴ったものとなっていった。この隔離された部屋。厳重に鍵のかかった病棟の扉。先をみれば永劫に遠い外の世界。私は滴る血液を見ながらそう耽り、ぐったりと坐り込んだ。
    ゆうた さん作 [394]
  • 纏わり付くもの?

    着いた先は、とある一室だった。病室をちょっと入ると看護士は振り返った。「今日から入院して貰いますね」私はその一言に愕然とし、返す言葉のひとつも探せられず開いた口が塞がらなかった。看護士が出ていくと次第に正気を取り戻していく。そしてそれと同時に腹の底から沸々と苛立たしさが沸き上がってきたのだ。−私はただ、私に纏わり付くものから開放されたかっただけなのに、それを気違いの狂信者のように縛り付け、隔離し
    ゆうた さん作 [427]
  • 纏わり付くもの?

    再び長椅子の冷たさが伝わってくる。朦朧と聞いていた医者の話は、霧がかかったように白く薄れて頭に漂っているだけだった。冷徹な長椅子はじりじりと私の感情を弄んでいる。どのくらい待っただろう。昼どきのようで、職員は売店で買い物を済ませている。一人がふらふら動きだすと、その数は疎らだが確実に増えていくのだ。私はその奇妙な人間の行動をぼんやり眺めていた。眺めながら、時間がきたら食べるという習慣に疑問をもち
    ゆうた さん作 [410]
  • 纏わり付くもの?

    暫く沈黙が流れた。私のあらげた声だけが辺りに反響し、看護士の微騒音も外の喧騒も、刹那、静閑したように思われた。医者は驚いたように目を丸くし、私から視線を逸らすことを忘れていた。すると、その静寂を切り裂くかのように慌てて看護士が奥のカーテンから入ってきた。「どうされました?」誰に尋ねてるのかわからない曖昧な投げかけは人間の耳だけでなく、壁にまで浸透していく。真剣な顔貌の看護士は、訝しげに私を一瞥す
    ゆうた さん作 [533]
  • 纏わり付くもの?

    奥のほうでせかしなく動く看護士の微騒音を気にしながら、私は医者の開口一番を待った。「今日はどうされましたか?」優しいながらも自尊心の高ぶった声は女医のものだった。「どうにかしてください」私は呟くように言った。「どうにか、と申しますと?」「だから、見ればわかるじゃないですか!」薄かった声は濃く塗り潰され、絵の具の原色そのもののように医者に浴びせ掛けた。
    ゆうた さん作 [416]
  • 纏わり付くもの?

    医者はデスクに向かい、ペンを走らせていた。私が入ると、はたとペンの動きをやめ、ゆっくりと私のほうに振り向いた。目が合う。途端、いつもの癖で私は顔をしかめ、目を泳がせた。しかし、ここは病院。なんのために此処に来たのか考え直すと恐る恐る焦点を医者の眼球に伸ばしていった。−違う−まるで普通の人を見るような医者の目は、珍しい不思議なものを見る凡庸人とは違っていたのだ。道行く人々は、例外なしに潜かに面罵し
    ゆうた さん作 [458]
  • 纏わり付くもの

    湿った淡い匂いが鼻孔を刺激し、静粛の中に殺気だった緊張感を生みだしている。長椅子に座る下半身はひんやりと冷たく、その冷たさは益々私を恐怖へと駆り立てた。「上原さん、2番へお入り下さい」空気に広がりながら、しぼれた声帯が私を呼んだ。蛍光灯の光をたくたくと反射させる、のっぺらの廊下に視線を下げながら、呼ばれた声の方へそぞろに歩きだした。私は一つのドアの前に来ると、酸素を濃厚に含み、肺から気体がなくな
    ゆうた さん作 [457]
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