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稲村コウ さんの投稿された作品が138件見つかりました。
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ほんの小さな私事(18)
結局、渡り廊下の様子はちゃんと見る事はできなかったけれど、見る限りのなかで、怪しい人影や、おかしな物は見えなかったし、赤い靄の存在は確認できなかった。あっとすれば、いつものように見える、白っぽい靄がちらほらと見えたぐらい。因みにこの靄の存在は、普段は微かにしか見えていないのだが、私が意識してそれを見ようと思った時には、それらがより鮮明に、私の視界に飛び込んでくるようになるのだ。感じとしては、望遠
稲村コウ さん作 [433] -
ほんの小さな私事(17)
図書館の事はあと、林さんが見てくれるという事になったので、私と高野さんで山下さんを帰宅途中まで送る事となった。まずその前に、このままスカートが切れたままなのも何なので、一旦、山下さんのクラスへと、ジャージを取りに行って、それに着替えてからという事にしたけれど、渡り廊下側を行って、そこでまた、何かがあるとも限らないので、二階の校舎繋いでいる連絡通路側で戻る事にした。連絡通路の窓からは、先ほど歩いて
稲村コウ さん作 [422] -
ほんの小さな私事(16)
それにしても気になるのは、どのように山下さんのスカートが切れたのか?見た感じでは、カッターナイフで切られた感じに見えるものの、人為的ではないとするのなら、その線は消える。かといって、何かに引っ掛かって破けるとするのなら、このように切れるには、鋭利な何かに引っ掛からないと、こうはならないだろう。第一、それとしても、引っ掛かって切れるのであれば、繊維の目に沿って切れる筈だ。山下さんのスカートは、繊維
稲村コウ さん作 [448] -
ほんの小さな私事(15)
「まさか…通り魔とか…。」高野さんの言葉に、山下さんは首を横に振った。「スカートが切れてるのに気がついた時、あたし、回りを見渡したんだけど、誰も居なかったわ。もしかしたら、どこか釘とかが出っぱってて、それに引っ掛かったとか思ったけど…特に何もなくて…。で…しばらく回りを見てたら、何か『ヒュー』って音と、良く解らないけど、変な唸り声みたいなのが聞こえて…怖くなって…。」「それで慌てて、図書館に駆け
稲村コウ さん作 [437] -
ほんの小さな私事(14)
林さんは、山下さんと私を、事務所の中に招き入れてくれた。山下さんを、林さんが用意してくれた椅子に座らせて、私たちは、彼女が落ち着くのを待つことにした。山下さんは、したにうつむいていて、スカートをギュッと握りしめていた。私はそれを見ていた時、ふと、彼女のスカートの裾が切れているのに気がついた。その切れ方は、カッターなどて切られたが如く、鋭く切り裂かれており、約十センチほど切れている感じであった。ま
稲村コウ さん作 [424] -
ほんの小さな私事(13)
林さんは、この高校の卒業生だそうで、去年完成したばかりのこの図書館に、出来た当初から勤めているそうだ。短大を出た後、すぐにここへと勤める事になったという事で、私たちとも年齢が近い為、高野さんなどとは友達のように接しているらしい。「沙羅ちゃんも本を読むのが好きみたいだから、ちょくちょく来ることになるかも?」「あら、そうなの。読書好きの人が増えるのは嬉しいわね。読みたい本はどんどん借りていってね。あ
稲村コウ さん作 [394] -
ほんの小さな私事(12)
図書館は、私が想像していたよりも大きかった。建物は二階建てになっており、一階には、貸し出し受け付けのカウンターと、エリア分けされて、様々な本が本棚に納められている。二階は、ここからでは様子が確認出来ないが、貸し出しされていない本があるらしく、その隣にミーティングルームがあるそうだ。「結構大きいでしょ?ここの図書館は、沢山の本があって、学校の生徒以外も利用出来るようになってるのよ。」確かに、中を覗
稲村コウ さん作 [424] -
ほんの小さな私事(11)
「どうしたの?何か居た?」「…あ…ううん、何でもない。何か見えた気がしたけど、気のせいだったわ。」「そっか。」不思議そうな顔をして、急に立ち止まった私に高野さんが、どうしたのかと尋ねてきたが、私は、彼女に変な心配をかけまいと、気のせいで通した。出来る限り笑顔を見せて返答したものの、脳裏には、何とも言えない不安が広がっていた。赤い靄が見えた時は、必ずといって、何かしらのトラブルが付近で起こっていた
稲村コウ さん作 [425] -
ほんの小さな私事(10)
こうして、弓道部に所属する事になったものの、本格的に活動するのは明日からになるので、あとは、高野さんと学校内を見学して回る事にした。他に気になっていた事の一つに、図書館の場所と、どういった書物があるのかも簡単に見ておきたかったのもあるので。幸いな事に、高野さんが図書委員という事で、図書館を利用するのも気楽に出来そうなのが助かる。「沙羅ちゃん、見た感じ、本読むの好きそうだもんね。どんな本読むの?」
稲村コウ さん作 [462] -
ほんの小さな私事(9)
と、いうことで、弓道部の面倒は、山崎先生が引き受けてくれる事となった。先ほど、瀧口先生が道場を管理していると言ったのは、道場の更衣室などの施錠がしっかりされているかなどの最終確認をしているだけで、道場内の清掃を含め、実質的に管理しているのは、山崎先生という事らしい。「入部者が来るとは思っていなかったで、道場は日頃から清掃しておるが、色々と支度しておかないとならんだろうて。ワシが今日、そのあたりを
稲村コウ さん作 [501]