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稲村コウ さんの投稿された作品が138件見つかりました。
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ほんの小さな私事(97)
なつきさんは、ポケットから一枚、紙切れを取り出すと、それに気を込めて、私の胸の辺りにかざした。すると、飛散しつつあった、私の作り出した気の光が、紙切れに集まってきて、のち、その光は、私の身体の中へと吸い込まれていった。するとどうだろう?次第に先ほどまで感じていた気だるさが、無くなっていくのを感じた。「沙羅、お前さんは、退魔師としての素質と、それに関する高い能力を有している様だな。…ただ、あまりに
稲村コウ さん作 [342] -
ほんの小さな私事(96)
「基本的には、まず、体内の気をコントロールして、その流れに、周囲にある気を集める。あとは、自分の思い描く気のながれを作ってやれば、様々な作用の気が出来上がるって感じ。…まあ、説明じゃわからないだろうから、まず、自分の中の気の流れを作るイメージをしてみるといい。そうするれば、今私がやったような事も出来るようになる。」そう言われ、私は、昨日、弓道場でやった様に、目を閉じて、意識を集中させる。すると、
稲村コウ さん作 [376] -
ほんの小さな私事(95)
なつきさんは、私が話を呑み込めていないのを見て、「ふーむ」と言ったあと、私に色々な説明を始めた。「どうやらお前さん、ほとんど清音ねーさんから話を聞いてないみたいだねぇ…。まあ、いきなり理解しろっても難しいだろうから、簡単に言うと、うちの一族は、いわゆる、霊能力ってのを持ってる家系なのさ。私もそうだし、あんただって何らかの能力を持ってる筈。取り敢えず、これを見てごらんよ。」なつきさんは、そう言って
稲村コウ さん作 [344] -
ほんの小さな私事(94)
私が意識を取り戻すと、そこはベッドの上だった。周囲を見渡すと、ベッドの周りを、カーテンが覆っている。どうやらここは保健室のベッドの様だ。「私…何故此処に…?」そう呟くと、カーテンの向こうから声が聞こえてきた。「おっ!目ぇ覚めたみたいだね。」聞き覚えのある声。なつきさんの声だった。なつきさんは、カーテンを開き、私の様子を窺う。「どう?気分は。まだどこか痛いとかあるかい?」そう聞いてきたので、私は、
稲村コウ さん作 [343] -
ほんの小さな私事(93)
私は、赤と青の混ざり合った靄を纏っている人影に近づいていった。ある程度寄ったところで、その人影が誰か、特定できるようになり、それが、山下さんの後ろ姿だと気づいた。「山下さん!」私がそう呼び掛けると、山下さんは、その声に反応して、こちらを向いた。虚ろな表情でこちらを見る彼女。視線はこちらを向いているものの、心そこに在らず…といった雰囲気を見せていた。「山下さん。心配しましたよ。今までいったい何処に
稲村コウ さん作 [367] -
ほんの小さな私事(92)
結局、保健室にも山下さんはいなかった。手掛かりになるような事もなかったが、気になる事は多くあった。まず、保健室にいた怪我をした生徒たち。カッターで切られた様な傷や、服の切れ方は、ここ連日起こっている事件との関連がありそうだ。また、それとは関係無い事だが、保健の先生である加藤なつきさんは、私の叔母であるという事が判明した。ただ、なぜ昨日、対面した時に気づかなかったのか…というのもあるのだが、そのあ
稲村コウ さん作 [332] -
ほんの小さな私事(91)
保健の先生は、私のいる側にやってくると、私の事をまじまじと眺めた。「ほー。ふむふむ。ほほぅ。なるほど。」「ええと…なんでしょう?」治療を放置され、騒いでいる男子生徒を無視しつつ、保健の先生は、私を見渡し、何度も頷く。私はただただ、困惑するばかり…。「うむ。そういう事か。お前さん名前は?」唐突そう聞かれ、やはり困惑しつつも私は自分の名前を言った。すると、先生は、『やっぱり』といった表情を見せた。「
稲村コウ さん作 [336] -
ほんの小さな私事(89)
「ん?なんだ?また怪我人か?」保健室の中を覗くと、中から保険の先生の声が聞こえてきた。「あ…いえ。そうではないのですが…。」私はそう答えながら中の様子を窺った。すると中には、先生以外に、怪我をしたらしい生徒たちが、四人ほどいた。一人は治療を受けている途中で、他の面々は、先生から手渡されたらしいガーゼやティシュペーパーなどで、傷口を消毒している様子だ。よくよく見てみると、その中の二人が、何かの切り
稲村コウ さん作 [327] -
ほんの小さな私事(89)
なんとか人混みをかきわけ、下駄箱までやってきた私たち。ある程度、下駄箱付近は人の数も少ないので、下駄箱周辺を見て回ってみるも、山下さんの姿を見つける事はできなかった。「そういえば…山下さんの靴はどうでしょう?それを見れば、山下さんが校内にいるか、外にいるか…という手掛かりになるかと?」「…そうね。ええっと…カズちゃんの下駄箱は…ここ!…靴、あるね。って言うことは…。」「校内にいる可能性が高いです
稲村コウ さん作 [347] -
ほんの小さな私事(88)
香取君を追いかけ始めた私たちだったが、既に彼の姿は見えなくなっていた。「さ…すが、スプリンター…。やっぱり足、早いわぁ…。」「香取君は陸上部なのですか?」「うん。そうなのよ。短距離なら多分、学年一じゃないかな?」私たちは、そう話ながら彼の後を追う。しかし、私たちにとって、階段を勢いよく降りるのは、容易い事ではなかった。正直なところ、私は走るのはあまり得意ではない。それは高野さんも一緒で、私たちは
稲村コウ さん作 [309]