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稲村コウ さんの投稿された作品が138件見つかりました。
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ほんの小さな私事(77)
廊下に出た私たちは、まず、西と北を見た。東西に伸びる廊下は、西の突き当たりで外に出られる扉があり、そこから図書館に通じる渡り廊下の途中に合流する道がある。その少し手前の階段から二階に上がり、二階の西から、図書館への連絡通路がのびている。また、保健室を少し東にゆき、そこの北に伸びている廊下を進むと、途中に下駄箱があり、更に進んだ先から、校舎北側の東西に伸びる渡り廊下に出られる。基本的には、今居る位
稲村コウ さん作 [339] -
ほんの小さな私事(76)
保健室に到着した私たちは、保健室の中を覗いてみた。するとそこには、白衣を着た女性が椅子に座っていて、私たちに気づくと、椅子ごとこちらに振り替えった。「入る時はノック〜。君たちはそんな事も教わらなかったのかい?」その女性は、そう間延びした言葉で私たちにそう言った。「す…すみません。ええと…こちらに女の子は来ていませんか?僕が少し前ぐらいに連れてきて、そこのベッドに寝かせておいたんですが…。」香取君
稲村コウ さん作 [353] -
ほんの小さな私事(75)
「カズちゃんが保健室に?何かあったの?」高野さんがそう聞くと、香取君は、渡り廊下であった事を話してくれた。「なるほどね。誰かが言ってた気絶しちゃった子ってのは、カズちゃんの事だったんだ。」「それにしても、何故、山下さんは居なくなってしまったのでしょう?保健室には他に誰か居なかったのですか?保険の先生など…。」そう聞いてみると、香取君は、首を横に振って答えた。「山下さんを保健室に連れていった時には
稲村コウ さん作 [338] -
ほんの小さな私事(74)
私たちは一旦、写真部の部室へと向かった。というのも、高野さんが、部室に置いたままにしてある荷物を取りに行く為であった。写真部の部室は、校舎北側にある、文化部部室楝にある。先ほどの生徒会からの勧告で、多くの生徒たちが既に帰路につきはじめている様だ。写真部に到着すると、もう中には、全く人が居なかった。「あら…もうみんな帰っちゃったかー。」そう言いながら、高野さんは、自分の荷物を纏めた後、「じゃ、行き
稲村コウ さん作 [337] -
ほんの小さな私事(73)
帰り支度を済ませ、私たちは、弓道場から外に出た。鍵を掛け、職員室へと向かおうとすると、山崎さんがこちらにやって来るのが見えた。「おお、お前さんたち。今から帰宅かね?」「はい。何かあったようで、臨時に生徒会から、下校の勧告がありましたので。今、弓道場に鍵を掛けて、職員室に鍵を持っていく所です。」私がそう言うと、山崎さんは、「ふむ」と言ったあと、少し間を置いてから私に言った。「見回りで弓道場を覗いて
稲村コウ さん作 [311] -
ほんの小さな私事(72)
私たちが、渡り廊下の件で話をしていると、校内放送が流れてきた。「生徒会から臨時に、お知らせします。ただいま、校内にて、異常事態が発生した為、全校生徒は直ちに、下校してください。繰り返します…」この放送を聞いて、私たちは二人、顔を見合わせた。「これってやっぱり、渡り廊下の事が関連してるよね。」「ええ、多分…そうだと思います。」少なくとも今、異常事態と言える事は、高野さんが見てきた渡り廊下の件以外に
稲村コウ さん作 [324] -
ほんの小さな私事(71)
「ところで、先ほどのサイレンの事はどうだったのですか?」私がそう聞くと、高野さんは、渡り廊下での事を詳しく教えてくれた。「もう私が行った時には、犬の死骸とかは片付けられちゃってたけど、廊下に真っ赤な血のあとが残っててね。それを見ただけでも衝撃的だったよ。見てた中の誰かが、それ見て気絶しちゃったとかもあったらしいし、かなり凄惨な現場だったみたい。」やはりあの場所には何かがあるのだろうか?昨日の山下
稲村コウ さん作 [345] -
ほんの小さな私事(70)
少し間をおいて、高野さんは、ヤカンとコップを持って戻ってきた。もうこの頃には、ある程度、体が動くようになっていたので、高野さんがコップに汲んでくれた水を受け取り、それをゆっくり喉に流し込んだ。「どう?少しは良くなった?」「ええ、何とか…。」私はこの時、先ほどの恥ずかしさを引きずっていたので、返答が少々歯切れの悪い感じになっていた。それを気にしたのだろう。高野さんは、申し訳なさそうに私に言った。「
稲村コウ さん作 [342] -
ほんの小さな私事(69)
大丈夫とは言ったものの、自力で起き上がる事ができなかったので、高野さんに手助けしてもらい、壁際まで移動し、壁に背をもたれて、暫く休む事にした。「でも、何でそんなになるまで?」そう聞いてきた高野さんだが、事に至るまでの説明をしても、理解してもらえないだろうと思い、私は少し、誤魔化して事を喋った。「久しぶりに弓を引いた事で、夢中になりすぎたのでしょう。神経を集中し続けて、途中、気が抜けた途端に力が抜
稲村コウ さん作 [359] -
ほんの小さな私事(68)
私は、自分の体のあちらこちらを見てみる。肌の露出している場所…先ほど見た手の反対の左手から腕にかけて、何やら薄い光のようなもので包まれていた。恐る恐る、その光を、右手で触ってみる。するとその光は、右手に吸い寄せられるかの様に、集まってきて、右手を覆う様にまとわりついた。特に感触があるわけでもなく、暖かかったり、冷たかったりという事も無い。ただ、こうしていて気付いたのは、私が意識を注いだ場所に、そ
稲村コウ さん作 [384]