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稲村コウ さんの投稿された作品が138件見つかりました。

 
  • ほんの小さな私事(67)

    高野さんが現場を見に行っている頃、私は妙に、嫌な予感を覚え、弓を引くのに集中する事ができなくなっていた。『どうも集中できませんわ…。なんでしょう…どうも落ち着きませんね…。』そう思いながら私は、一度、大きく息を吐いた後、ゆっくりと弓をおろした。そして、床に正座し、弓を床に置いてから、目を瞑って、心を落ち着けようと試みた。静まり返った空気のなかで、余計な思いを振り払い、精神を研ぎ澄ます。僅かに遠く
    稲村コウ さん作 [331]
  • ほんの小さな私事(66)

    保健所の人達が、死骸の処理を終え、去っていった後も、瀧口先生達と警察官が、色々と話を続けていた。そこに、後から駆け付けてきた高野さんが、現場に到着した。「ん?何で高野、ここに来てるんだ?」高野さんの姿を見つけた瀧口先生は、高野さんにそう言ったが、高野さんは、キョトンとした顔で答えた。「何でも何も…騒がしかったからきたのよ。何かあったの?」そう聞いてきた高野さんに、瀧口先生は、一度ため息をついてか
    稲村コウ さん作 [338]
  • ほんの小さな私事(65)

    そんな風に、休憩がてら、私たちがしゃべっていると、遠くから次第に、こちらに近づいてくるサイレンの音が聞こえてきた。暫くして、サイレンの音が一番大きく聞こえていた所で止まった。「一体…何なのでしょう?学校の校舎側に来た感じですが…。」「何か事件とか?なんだろ?…気になるなぁ…。」私たちは、そう言いつつ、音の響いていた方向に目を向けてみたが、弓道場は壁に囲まれているので、外の様子は見えない。私は高野
    稲村コウ さん作 [361]
  • ほんの小さな私事(64)

    瀧口先生が、警察と保健所に連絡を入れて、ある程度した頃、まず、警察官が最初にやってきた。瀧口先生は、事前に、最初に現場を目撃したという生徒に状況を説明させ、続けて瀧口先生自身が、警察官に事情を話した。あとは、野次馬になっている生徒たちを廊下から追い出し、警察官が駆けつける前にやってきていた教頭先生を交え、現場検証を開始した。改めて今度は弓道場。私はある程度、射撃を続け、感覚が自分の思う所まで研ぎ
    稲村コウ さん作 [342]
  • ほんの小さな私事(63)

    渡り廊下には、広まった噂で、野次馬が次第に増えていった。倉橋先生は、どうしていいものかわからずに、周囲の生徒を、犬の死骸から遠ざける所まで下げたものの、あとどうするかを迷い、おろおろするばかり。そんな時、駆け付けてきたのは、瀧口先生であった。瀧口先生は、最初、犬の死骸を見て、一瞬たじろいだが、すぐに冷静さを取り戻すと、倉橋先生に向かって言った。「状況はどうなっているか、わかりますか?」「い…いえ
    稲村コウ さん作 [343]
  • ほんの小さな私事(62)

    倒れている動物は大小二匹で、片方は犬であった。その犬は首を鋭い刃物か何かで切り裂かれており、辺り一面には、犬の首から吹き出した血で染まっていた。山下さんはそれを見て、ショックのあまり、その場にへたりこんでしまった。「何でこんな…。」香取君も、その光景に驚き、言葉が詰まったが、それよりは今、へたりこんでしまった山下さんの事が気がかりである。「立てる?」そう聞いてみたが、山下さんは、呆然とした表情の
    稲村コウ さん作 [345]
  • ほんの小さな私事(61)

    私たちが弓道場に居た頃、別の場所で、事件が起きていた。山下さんは、図書館から一度、校舎に戻ろうとしていた。図書館の二階にある資料室の鍵を職員室に取りに行く為であったが、本人は下の渡り廊下から、校舎へと移動していたのだ。昨日の事もあったので、あまり本人としては、こちらを通りたいと思っていなかったのだが、この時は、同じクラスの図書委員である香取君が一緒だった為、心配はあるものの、下の渡り廊下で行く事
    稲村コウ さん作 [337]
  • ほんの小さな私事(60)

    私は続けて矢を放ち、弓を射る感覚を取り戻していった。多少、矢を放つ時の姿勢が安定していない感じもあったが、何とか的を捉える事は出来ているので、フォームなどをあと如何に安定出来るかがポイントになりそうだ。そんな風に、私が弓を射っていると、射的の扉から、ヒョッコリと顔を出して、こちらに手を振っているのが見えた。「いいですよ、入ってきて下さい。」私が弓を下ろしつつ、そう言うと、高野さんは、辺りをキョロ
    稲村コウ さん作 [345]
  • ほんの小さな私事(59)

    本日、午後の授業も終わり、放課後、私は弓道場にやってきていた。高野さんは写真部の部室へと行ってしまった為、途中で別れたのだが、彼女は後で、私が弓を引いているのを写真に撮りに来ると言っていたので、暫くした頃にこちらへとやってくるだろう。また、職員室前で山崎さんに会ったのだか、守衛室でやる事があるからと、一人で練習などをしていてくれ、と言われたので、私は一人、鍵を持って、弓道場まで来ている。鍵を開け
    稲村コウ さん作 [348]
  • ほんの小さな私事(58)

    暫くした頃、お昼休み終了十分前のチャイムが鳴ったので、私たちは、借りていく本を、受け付けに持っていった。高野さんが貸し出しの手続きをしたあと、今度は私が手続きをしようとしたのだが…。「これ、貸し出しカードが付いてない…。沙羅ちゃん、これ、どこから持ってきたの?」山下さんがそう聞いてきたので、私は、地域資料のコーナーから持ってきた事を告げた。それを聞いて山下さんは、林さんに古ぼけた本の事を聞きにい
    稲村コウ さん作 [341]
 
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