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ケィ。 さんの投稿された作品が48件見つかりました。
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―Never Land― 6.
二人は共に言葉を無くした。その沈黙を終わらせたのは、意外にもナガセの方だった。「…僕は、何となくあなたの頭の中が透けて見える様な時がある」 イェンには、ナガセが何を言おうとしているのか掴めなかった。ナガセは独り言のように続けた。「あなただけじゃない。あなたの上司に、あなたの前任者…自分でも意識する前に、僕は他人の裏側を視ようとするんだ。前はそうじゃ無かったのに」 その幼い体の内に、既に限界を超
ケィ。 さん作 [464] -
―Never Land― 5.
ナガセは手渡されたマグカップを冷ややかに見下ろした。 イェンは自分のカップを手にテーブルの向かいの席に座り、さりげない調子で口を開いた。「飲むといい。気分が落ち着くから」「…ココアで?精神安定剤の方が確実なんじゃないの」 イェンの穏やかな眼差しが、逆にナガセの胸の内にザワザワとしたさざ波をたてていた。 何故だか、眼鏡の奥にあるそのトパーズの様な瞳を台無しにしてやりたくなって、意味も無く彼に反抗
ケィ。 さん作 [563] -
―Never Land― 4.
「異端の天才児、冒讀の児、遺伝子のキメラ…人工受精と遺伝子操作によって生み出された、歪んだ研究対象」 ナガセは己れの傷である言葉を幾つも、すらすらと言って見せた。それらは皆、数年前の新聞が彼につけたあだ名だった。「僕のせいで僕の両親は牢獄に繋がれている。その僕が、どこへ行けるって言うの」「君のせいじゃない。彼等が捕まったのは、彼等自身の罪のせいだ」「僕を造った、っていう、罪」「自分を責めるな」「
ケィ。 さん作 [550] -
―Never Land― 3.
ヨットが水平線の向こうへと進み、見えなくなった。 白い砂浜には椰子の木が立ち並び、その先では子供が波打ち際で犬と戯れていた。 ナガセは砂浜に立ち、青く何処までも広がる海を眺めた。 右手に持った小さなリモコンのスイッチを切ると、それらは忽ち消え、代わりに白く無機質な壁に囲まれた、殺風景な部屋が現れた。 ホログラム。触れる事の出来ない幻。「海へ行きたいの?」「ううん、そうじゃない。何処か行きたい場
ケィ。 さん作 [550] -
輪廻
「生まれ変わったら何になりたい?」「そうだな…」ユキが俺の腕の中で、上目使いに答えを待っている。「またユキの彼氏になりたい」ユキは嬉しそうだったが、ワザとむくれて見せる。「もー、適当なんだから。マジメに答えて。」「マジ、マジ」俺はご機嫌取りにユキのオデコにキスをひとつ。こーゆーのバカップルって言うんだろうな、とどっか妙に冷めた気持ちで。しかしながらこの世には『クウキ』ってヤツが有り、それを外すと
ケィ。 さん作 [965] -
―Never Land― 2.
ナガセが部屋を出た後、イェンは一人カプセルの前に佇んでいた。 これが何であるか、イェンは知らない。ディスプレイに映る文字は彼に親しみのない物ばかりで、解読出来そうもない。 機械と無縁の、只の役所の職員に過ぎないイェンは、ある日この天才児の保護を命じられて、以来、ずっとこの子供を見守って来た。 そして子供は、自分自身の事など省ずコンピュータと向き合ってばかりいる。 カプセルが出来上がる前、そ
ケィ。 さん作 [523] -
―Never Land― 1.
暗い室内には無数のコードが蔦のように垂れ下がり、その根元に花弁のように配置されたディスプレイが青白い光を放っていた。 その光の中央には、巨大な卵のような半透明のカプセルがシルバーの土台に据えられて、淡く幻想的に照らし出されている。 静寂の中、コポコポ、と音が響き、次いで湯気が立ち込める。「そろそろ終りにしたらどうだい?」 マグカップを片手に、眼鏡をかけた男が卵型のカプセルに近づいた。 カ
ケィ。 さん作 [623] -
もう、哀しくもないけれど。
苦しい、とは、何だったでしょうか。今まで、随分無理を重ねて来たけれど、ただ体のダルさばかり感じます。そんな時は、辛いと思わなくも無いけれど、多少の辛さは、皆抱えているものですから。動けないのは、動かない私が悪いのです。食べ物が食べられないのも、只の私の贅沢です。眠れないのは、自己管理がなってないからですね。だから私は、動き、食べ、眠ったふりをします。人の見ていない所では、そりゃ、サボりますけど。
ケィ。 さん作 [451] -
BAD GIRLその?〜エピローグ〜
後日談。俺達は逃げていた。放火及び暴行容疑の、指名手配犯として。「でもボヤで済んだんだから、貼り紙までして捜す事ないのにね」放火の犯人、チェルシーが言う。「やっぱり金庫の中身盗ったからか?裏金だから、大っぴらに盗られたって言えねーだろうけど」ガメた金を6割持っていった、タックが言う。因みにチェルシーが3割、後が俺。「いや、フツーに、警備員ヤりすぎたからだろ…」俺はため息混じりに言う。新聞には、実
ケィ。 さん作 [625] -
BAD GIRLその?
「テメェが儲かるっつったから話に乗ってやったんだろーが!」「金庫じゃなくても、金目の物くらいあるだろ?」俺達は不毛な言い争いを続けていた。そんな場合じゃないのに。「ねぇ、イかせてくれるんじやなかったの?」タックに殴られそうになっていた俺を、チェルシーがぐい、と引き寄せた。「その誤解する言い方止めてくれない?」俺はそう言ってチェルシーを引き剥がす。と、タックを見ると、完全に引いてしまっている。「変
ケィ。 さん作 [579]