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公募投稿作品に含まれる記事が496件見つかりました。
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白い天使のうた (20)
「それでは、今日読み聞かせをがんばったみんなに、歌のプレゼントです。」大資が大きな声で言うと、子供たちはワァーと喜んだ。そんなみんなの喜びの声は、りらには聞こえず、沢山の人の中にいること、それ自体が少々ストレスのように見えた。そんな中でも、「がんばれ、りら。」言葉にすることの出来ない思いの中で、祈りながら、みんなの前にりらを連れて行くと、子供たちの目が、りら一点に集中した。さっきまで賞を受けてい
宮平マリノ [587] -
白い天使のうた (19)
大資が、「今度、施設の中で、絵本の『読み聞かせ大会』をしますよ。」 と話した時、塚本は他のことを考えていた。「りらをその中で歌わすことはできないかな。」あれから数カ月が経ち、森の小道の歌を、りらはすっかり自分のものとしていた。歌うことが前よりも自然なことになっていき、息をすることの代わりのようであった歌が、前よりもっと、自然な感覚となっていた。「歌があれば、もっと人前でも立つことができるのでない
宮平マリノ [634] -
白い天使のうた (18)
それはまるで、りらの歌の世界、こころの願い、そのもののようであった。歌いながら、りらが生き生きとしていくのを塚本は見た。時に、りらの声が、ハーモニーのように、重なるのが聞こえた。通常、二人で歌う声が、声質によって、互いの声と声の間に入って、二人で歌っているのに、三層にも五層にもまるで合唱しているかのように聞こえる時がある。塚本自身、そんなハーモニーを表わすデュオを何度も見てきたが、りらが歌う声の
宮平マリノ [606] -
白い天使のうた (17)
もっと、歌詞を教えてやらなくちゃいけないな、塚本の心にはいつもそのような思いがあった。透き通る天使のような歌声のレーナ・マリアの歌を、りらはとても愛していた。特に、施設の木々の間でいつも歌を歌っていたりらにとっては、『森の小道』という曲は、親しみのある歌詞だった。デッキのリピート機能を覚えると、その曲を一日中聞いていた。主イエスとふたり 森を行けば調べをあわせ 歌う鳥たち新しい世界へと 見せてく
宮平マリノ [672] -
白い天使のうた (16)
りらは、少しずつ表情を増していった。始め、遠くから眺めていた、施設の他の子供たちの動きにも、少しずつ距離を縮め、近くまで入るようになっていた。それでも、他の子たちのように、物の貸し借りをすることはできず、大資の読む、読み聞かせの中にいて、他の子たちの笑うのを見て、自分も笑ってみたり、自分もその中で読んでほしい本を持って行くけども、渡すことのできなかった本を、戻って来て塚本に渡した。塚本としては、
宮平マリノ [634] -
白い天使のうた (15)
そんな中、大資の読む絵本や本の内容は、あからさま、というほど、みなしご達の話だった。赤毛のアン、長くつしたのピッピ、みなしごハッチ、母をたずねて三千里、小公女セーラ、フランダースの犬、マッチ売りの少女、シンデレラ、白雪姫、白鳥の子。フランダースの犬は、読んで聞かせている大資だけが、感動して涙を流していて、他の子たちは、可哀そう過ぎて、余計に落ち込んでいたことを伝えると、反省していたが、それでも、
宮平マリノ [537] -
白い天使のうた (14)
大資の絵本の読み聞かせは、始め、一人二人の子供をむりやり連れてきては座らせ、聞かせるというよりは、むしろ、聞いてもらう、という感じであった。しかし、つっかえていた言葉も、だいぶ緊張が解けてくると、感動溢れて、そこはとても穏やかな優しさの流れる空間となってきた。そうすると、子供たちも少しずつ自分から集まるようになり、何度も聞いている子供たちの中には、自分のお気に入りの本を差し出すようになった。この
宮平マリノ [538] -
子どもは家を選べない〜その17〜
ここまで書いてきて、中傷の書き込も見つけたので、小説の分野から、問いかけを行います。 結衣子さんのモデルや、そこに出てくる家族は実際に、今、生きて、この世にあります。 これは、事実なのです。 ただ、昨今の日本社会は、隣の家で、このような事がおきていると、うっすら察していても、他人の家に入り込む事が躊躇されて、何かが起きてから、ああ、私、そんな気がしてたと口にするのが関の山です。 戦後の日本は、
真理康子 [1,022] -
子どもは家を選べない〜その15〜
一族にとって、千鶴子がこの家にいること自体、辛抱しがたいものがあった。 若い頃から、絶えず、異性問題で醜聞を流し、その相手は決まって近親者の知り合いだった。 幼い姪をして、「千鶴子おばちゃんは、私ら女の従姉妹には興味がないよ」と言わしめた。 房子には、一人も言い寄る相手はなかったが、結衣子に想いを寄せる相手には、ことあるごとに近寄り、男性と話す喜びを味わった。調子があがると、卑猥な話を口にした
真理康子 [642] -
子どもは家を選べない〜その15〜
千鶴子と房子は、気持ちの優しい結衣子等の父親が、ストレス〜来た胃の病でなくなったことを知っていた。 結衣子がストレスに弱い体質だということもわかっていた。 モノをかすめても少々不機嫌な表情を見せるだけで(二人には、それさえ快感だった)、通りすがりに聞こえよがしに嫌味を言ったり、本人には自分の姿が見えていないので滑稽なだけだが、結衣子の視界で首をすくめたり、手を掲げたりと、思いつくままに嫌がらせ
真理康子 [647]