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公募投稿作品に含まれる記事が496件見つかりました。
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子どもは家を選べない〜その3〜
結衣子が、親や妹に関心を薄く出来たのは、おそらく、自らの病で、顔立ちや体型など目に見える部分と共に、進路自体を確保できなかった喪失感を、自らの手で修復するのに手間どったからである。幼少時は、何があっても、常に明るい方に導いてくれる祖父がいた。 この祖父によって、あらゆる不幸を、他人のせいにして、それをどうこうしてくれなどとは言わないように育っていた。 祖父なきあとの財産である。 ただ、やはり、
真理康子 [1,067] -
子どもは家を選べない〜その3〜
結衣子は、自分の家族でありながら、房子達の神経を、疑っていた。 病と決めつけ、その奇異な行為を取り上げようとはしなかった。 例えば、結衣子が、来客用の二重のトイレットペーパーを仕事場のトイレに据え付けておくとする。 母親の愚かな振る舞いは、真夜中にトイレに入って、その表面の紙を体に巻き付け、カシャカシャ音を立てて結衣子のそばを通って、自室に持ち込み、平然と、自分の買い物のような顔をするといった
真理康子 [1,398] -
汝、右の頬打たらば
「汝、右の頬打たらば、左の頬も差し出すがよい」 子どもの頃、近くの教会日曜学校に通っていた。 別に、宗教的な問題意識ではなく、ただただ、雰囲気が好きだった。 特に、マリア像の美しさに強く惹かれて、学習机の正面に張り付け、このようになりたいと、ずっと憧れていた。 普通なら、まだまだ母親を世界の中心に置くであろう年代の時でありながら…である。
まりこ [914] -
白い天使のうた (13)
彼はほとんど、読み書きが小学生から中学1年生レベルまでしかなかったのが、奇跡的に癒されて、中学、高校を卒業し、福祉の専門学校に通うまでになった。そんな中で、専門学校を卒業し、この施設に就職した先、自分の力の限界にぶつかり、当惑していたという。塚本さん達のようになることはできず、自分と塚本夫婦と何が欠けているんだ、と困惑していた頃、受付で、施設見学とボランティアの申請をしている、聖書を持ったひとり
宮平マリノ [520] -
白い天使のうた (12)
大資は、相変わらず塚本の渡す聖書の言葉入りのポストカードを、毎回毎回非常に喜んでくれた。塚本がりらに絵本の読み聞かせをしていると話し、大資も真似して施設の子供たちに読み聞かせを始めた頃、「僕って、自閉症だったんですよね。」と大資が話し出した。人とまともに顔を合わせることはできず、普段、自分の感情を表わすことのできない、彼の言葉は投げやりで、ぶっきらぼうで、破壊的だった。両親が見捨てそうな程、手を
宮平マリノ [448] -
白い天使のうた (11)
施設に来た翌日にあげたポストカードがきっかけとなって、大資からは会う度に毎回、「ポストカードをいただけますか」、と聞かれるようになっていた。聞き方は控えめだが、あまりにも必死というか、すがるような一生懸命さに、塚本の方も、毎回あげる決心をしていた。そんなに喜ぶなら、と星野富弘さんのポストカードをシリーズごとに一枚一枚手渡していたが、しまいには全シリーズ揃いました、と言われ、塚本自身がポストカード
宮平マリノ [443] -
白い天使のうた (10)
施設に来始めて、半年から一年が経とうとしていた。施設に来た初日から色々と声をかけてくれたあの職員とは、二人で食事をする仲になっていた。彼の名前は「大資」と言って、「大きな資産なんて、うちの親腹黒いでしょ。」と言って笑ったが、「いえ、大きな資源・資質という意味でしょう。」と言うと、半泣きで喜んでいた。きっと、みんなそれぞれに、自分の名前に込められた意味を理解しながら生きている。そして、名前からも何
宮平マリノ [461] -
Another Love
私はもう引き返せないのだ叶わない恋をもう一度しようとしているそして禁断の罪を今感じている会いたい時に会えない…どうしようもない感情確かにここにある熱い感情果てまで想像して堕ちるまで想像してわかっているのにわかってない感情を押し殺せないでいる私は あなたにまた恋をする―\n第一章〜出会い〜出会いは ありきたり 私の友達の友達気さくに話してくれる弘人趣味が合う私たちはすぐに打ち解けた二人とも洋服が大
サクラ [663] -
白い天使のうた (9)
りら(彼女)の方も、だいぶ心を開きつつあるのかもしれない。始め警戒するように、振り返り振り返りにらみつけるように退散していた彼女も、最近では別れの際に軽く頭を下げるようになった。いつも(気をつけ)をして、深々と頭を下げ一礼する塚本に真似るようになったのだ。ごくたまに、はにかんだのか、ひきつっているのかわからない顔で会釈する時がある。ずっと動かしていなかった筋肉の、どこを動かせばいいのかわからない
宮平マリノ [463] -
白い天使のうた (8)
中庭で曲を聴かせることの他に、塚本は彼女に絵本の読み聞かせを始めた。読み聞かせる絵本の内容をよくよく注意してやらないと、彼女は眼を見開きながら、次の話の展開がどうなるのかと、怯えながら、絵本と塚本の顔を代わる代わる見ては、忘れた記憶の恐れだけを引き戻すかのようだった。うさぎの事件以来、言葉をほとんど失ってしまった彼女が表わす感情表現は、眉間のしわの寄り具合と、時々締め付けられるかのように胸元を抑
宮平マリノ [467]