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ミステリに含まれる記事が2060件見つかりました。
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犬と猫
「犬と猫」それは決して仲の悪い事の例えでは無い。6月。世間では梅雨と呼ばれる季節だ。薄暗い部屋の窓の外からは雨が地面にたたき付けられる音が聞こえてくる。そして、俺の携帯からは着信を告げる音が流れている。『佐々木』携帯のディスプレイにはそう印されていた。だが、今の俺はその電話に出る気力は残ってはいない。それどころか、髪からは水滴が垂れており、服はびしょびしょに濡れている事にすら今ようやく分かった。
マンボウ [434] -
ハーフムーン (51)
店の奥から出てきたのは、一人の若い女性だった。「明日香ちゃんって言うんだ。バイトで入ってくれた女の子さ。彼女が持って来たCDを、今かけたんだよ」そう言って、マスターは彼女を二人に紹介すると、その明日香という女性は、お盆を手に持ったまま、上品にお辞儀をした。年、背格好、長い髪…ミユキと少し近い雰囲気の、明日香という女性に対し、マモルはとても興味を持ったようだった。「マジかよ…カワイイ」マモルは小さ
翔 [835] -
ハーフムーン (50)
ミユキは、しばし話すのを忘れ、音楽に聞き入った。そして、マモルに向かってこう説明した。「この曲はね、『ハーフムーン』ってタイトルなの。1曲目に入ってて…しかもライブ音源だから…このCDはおそらく2枚組のライブアルバム『ジョプリン・イン・コンサート』の2枚目に違いないわ」「お前、詳しいんだな」マモルは感心するように言った。「ウン…ショウに色々教えてもらって、詳しくなっちゃった。それに、このアルバム
翔 [783] -
ハーフムーン (49)
現れたのは、スナック『メラミン』のマスターだった。ミユキが彷徨うきっかけとなった、あの日の夜に出会った男だ。「やぁミユキさん。お久し振りだね」男は言った。「知ってるのか?この男」マモルが、ミユキに聞いた。「ウン。スナック『メラミン』のマスターなんだ」「何だ??その…メラ何とかって?」マモルは不思議がる。「オイオイ、君達。今はもう、その店やってないんだ」男はそう言うと、小屋の脇に、くくりつけられて
翔 [785] -
ハーフムーン (48)
「ミユキは…そのショウって男、ずっと探してたのか?」マモルは言った。「ウン…だけど、どんどん知らない場所に来ちゃって、探すどころじゃ無くなってしまって…ここにたどり着いた時は、ショウの手がかりなんて、ほとんど諦めてた…でも神様はまだアタシのこと見捨てていなかったんダ」ミユキはそう言うと、ショウの写真が入った半月型のペンダントを、キュッと握りしめた。「オヤッサン。そのショウって男は、今日現れるの
翔 [796] -
♪壊れて出ない音がある〜第3(最終)楽章〜
…なぜそこまで動揺したのか…パパに申し訳なくて、だとか…、名器で何千万もするもので、だとか…、太郎さんはこの類のことには一切ふれていない。紐解く鍵は次の証言にあった。『証言の確認』♪ドとレとミとファとソとラとシの音が〜出なぁい♪(×2)『証言の分析』ハァ〜、分析するのも忍びない…な、な、なんと!ドとレとミとファとソとラとシの音が出なくなってしまったと証言している。メロディを奏でる楽器で、これだけ
えぼしぃ [591] -
ハーフムーン (47)
「ところでオヤッサン、これだけは正直に答えてくれ。一体、誰にそそのかされて、ここに来たんだ?」マモルは亀山に聞こえないように、小声で尋ねた。オヤッサンは、『別にそそのかされた訳では無いが』と前置きした上で、こう答えた。「ショウという男だ」その瞬間、ミユキの身体がピクリと大きく反応し、うわずった口調で言った。「そ、その人の…特徴って分かりますか?」「特徴…そうだな…背は高かった…180くらいあった
翔 [788] -
♪壊れて出ない音がある〜第2楽章〜
…結局、クラリネットが壊れた理由は、太郎さんの証言(歌詞)から読み取ることはできない…。が、重要なのはその次である!『証言の確認』(♪壊れて出ない音がある〜)どーしよ〜、どーしよ〜♪どーしよ〜、どーしよ〜…『証言の分析』太郎さん、かなりの動揺だ。声に出てしまうほど、どうしたらいいかわからない状態に陥ってしまっている。飼ってた金魚が死んじゃいました(まあ、悲しいけどね)とか、お気に入りのグラスを割
えぼしぃ [719] -
人類絶滅計画2〜失敗〜
イブが俺の方に近づいてきた。それから彼女は、物珍しそうに俺を見た。それもそのはずで、彼女は自分以外の人間を初めて見たのだ。すぐに引き金を引いてもよかった。でも俺は躊躇していた。彼女を殺してしまえば、全人類はいなくなるのだ。イブは歴史上最初の人間であり、ほとんど、あるいは全ての人間はこの女性から生まれるはずだから。当然そうなると、俺自身も消えて、はじめからいなかったことになる。それは恐ろしいことだ
hiro [866] -
人類絶滅計画1〜実行〜
人間なんて絶滅してしまえばいいのに…。ある時から俺はそんなことを考えるようになっていた。大体、なぜ人間なんて無意味なものが生まれたのか。それは俺にとって最大の疑問だ。俺がこんなダメ人間になった原因は、母にあるに違いない。「あんたなんかもう知らないから」ある日突然母はこう言って家を去った。俺は独りになった。あの時から俺の人生は狂い始めたのだ。そしてもう誰も信じられなくなっていた。ついに俺は、自らの
hiro [1,010]