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SFに含まれる記事が1822件見つかりました。
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MLS-001 009.5
駅前のアパートの一室。殺風景な六畳半の1Kにソファが一つ、ベッドが一つ、小さなガラスのテーブルが一つ置かれている。どうしてあんなこと言っちゃったんだろ。真龍はソファに寝転がって街頭の明かりのせいで星の見えない夜空を眺めていた。理由は分かりきっている。初めて会いに行った、たった一つの姉さんの形見が、自分の全然知らない男と幸せそうにしてたから。これも嫉妬って言うのかな。機械相手なのに、ね。ベッドに飛
砂春陽 遥花 [723] -
人の掟4
手で確認すると枕は少し湿っぽかった、それが涎か涙かは分からなかった。白いカーテンから透けて見える向こう側が一層白く見えたので、今日の天気が雪だということに前崎正悟(まえざきしょうご)は気付いた。部屋を占めているのは機会音と青白い光、机の大半を占拠したパソコンは何かダウンロードしている最中。画面には「TS3」と映っていたがオレには何のことやらサッパリ。「新しいゲームか………?」そこでようやく正悟は
G [463] -
ときのこ 4
「死んだ?なんで?寿命ってことはあり得ないし、今時事故や病気ってのも考えにくいなぁ」話している内容の重さに関係なくクロノはいつも通りの口調で話す。「お前は私に気を使ったりって事が一切無いんだな。」「気?何に?」「いや、何でもない。姉は事故死と言うことになっている。」「『と言うこと』?」「ああ、隠蔽工作だ。姉は殺された。死体の状態を(ハッキングして)見たが胸部と頭部に銃で撃たれたと思われる傷跡があ
アオ [445] -
MLS-001 009
「そこまでして愛されたいの。」侮蔑と憎悪のこもる声だった。「家族に彼氏に友達に捨てられないか、逐一びくびくして、ばっかみたい。」言葉を吐く度に少女の息が激しく花鼓の顔にかかる。閉じたり開いたりするみずみずしい唇を花鼓はぼんやりと見ていた。「最後の一体がそんな風じゃ、死んだ博士が泣くわね。」真龍は微動だにしない花鼓にあきれて顔を離した。乱れた黒髪を手で整える。目の前の哀れなモルモットはじっとこちら
砂春陽 遥花 [686] -
MLS-001 008
扉が開き、カーテンごしに長い髪の女性の影が見えた。「お母さん。」花鼓は呼び掛けたが、返事はない。「こんにちは。」若い女性の声がして、カーテン裏から影が本体を現した。長い黒髪の少女。モノクロの花柄のワンピースが細い体を更に細く見せる。「こ、こんにちは。」どもる花鼓に少女はいきなり飛びついた。「花鼓、花鼓だよね。もう会えないかと思った。」ぎゅっと強く抱きしめられた。肩の上ですすり泣く音さえする。誰だ
砂春陽 遥花 [712] -
人の掟3
そしてもし一つ、学生の皆さん、あなた方はたぶん一番の税金泥棒と言えるでしょう。……ですが、例外は存在するので、深く突っ込まないで解説しましょう。まず、学校での授業をあなたはどれぐらい本気で受けていますか?「勉強なんてしても社会で役に立たない」、なんて言い訳してサボってませんか?確かに数学の公式や、理科の法則なんて実生活には何の役にも立ちませんが、大切なのは課題をこなすということだと思います。これ
G [489] -
人の掟2
さて次に在学中の皆さんに言いたいことがあります、あなた方は自身の存在の脆さを理解していますか?存在というのは「生」の意味ではなく「価値」若しくは「意義」、「意味」と解釈して下さい。想像して下さい、もし母親が居なくなったら、料理は誰が作ってくれますか?もし父親が居なくなったら、生活費は誰が稼いでくれますか?たった一人だけでも居なくなるとあなたの存在は変わってしまう。それほどあなた方の存在は儚いので
G [489] -
人の掟
人の掟前書き初めまして、拝見いただき有難うございます――――なんて口上はどうでもいいですね…………皆さんは疑問に思ったことはありませんか?なぜ物語の主人公の大半は学生なのだろうかと…………たぶん無意識でそれが特別な時期だということに気付いているのでしょう、だから後悔の気持ちを書に表すのでしょう。嘘は無いでしょう?「申し訳あの日々を送ってみたい」と思わないはずが無い。
G [533] -
ときのこ 3
「あれは誰?」リビングに入ってすぐにクロノがそう聞いてきた。おそらくテーブルの上にある写真のことを言っているのだろう。「右の女性が私の姉のヤクサ、左の男が弟のシュバラ、で真ん中が私。」「他の二人はどこで何を?」ヒナツはその質問に少しだけ違和感があった。「お前は私のところに来るときに私のことを調べただろう。なぜそんな事を聞く?」「ヒナツの性格だけ調べた。他は後で良いかなって思ってさ。それに、自分で
アオ [412] -
MLS-001 007
赤いTシャツに白いジャケット姿の青年は、窓際にあった椅子を引いてきて花鼓の傍らに腰を下ろした。さっきまで来実子が座っていた席だ。「私、覚えてないの。あの日、何があったのか。」青年は花鼓のすぐそばで、息を殺して続きを待っていた。「私が何をしたのか。」息を吸い込むと甘い香りが口の中まで立ち込める。「どうして、したのか。」「動機が思い出せない、か。」途端、明広は大げさに腕を組みにやにやしながら言った。
砂春陽 遥花 [700]