航宙機動部隊25
クレオンの主張は、充分な根拠に基づいた物だった。 彼は実に理路整然と分析して見せた。 ―エントレンスを占領して、敵の補給線と連絡網を切断出来れば良い。事実それは可能だろう。しかし、例え、理想的に彼等の本国との連携を、塞いだとしても、パレオス星系と言う、巨大な恒常的・生産基盤に布陣する連合艦隊に、兵糧攻めが効くだろうか。三0000隻の産業船団が健在な限り、敵に補給の心配は無い。しかも、その航行する、プラント達は、二0000隻の純戦闘艦船と、それとほぼ同数の軍用機で、がっちりガードされている筈。どの道これを破る以外、有望な選択肢は無い。 ―それに、後方に回り込まれて、窮地に陥るのは、寧ろ統合宇宙軍だ。兵力が多い方が包囲戦で有利なのは常識だし、帝国の後背宙域は、磁力銃剣で押さえられているだけであって、安定とは程遠い政治状況だ。言い換えれば、行った端から切り取り放題、中には帝国に対する反感から、喜んで寝返る支配下勢力も、出てくるだろう。最悪帝国は、皇帝エタンと、大本営と、今ここに集結している機動部隊しか、残らなくなってしまうかも知れない。補給を断たれる所の騒ではなくなる。その補給源自体が、なくなってしまうのだから― どの道短期決戦・正攻方しか、活路は無いのだ。例えそれが、どれだけ危険な賭博を意味しているとしても。星間大国が覇を競った時代が、かつてあった。重厚長大な軍備拡張の下、わずかな宙域を巡って、熾烈な艦隊決戦が何べんとなく繰り広げられ、総力戦《ハルマゲドン》・総動員の号令の下、年表が一行書き込まれる毎に、何百万もの人命が、当たり前の様に犠牲に晒された。 もう六00年も昔の話だ。 星間大国は全て滅亡し、以来、銀河大戦《ギャラクシ―ウォ―ズ》は死語と化した。 特にこの一星紀間、一0000隻・一00万人以上が参加した、戦争はない。演習もない。 そこまで考えて、エタンはふと悪寒を覚えた。 帝国は、そして自分は―かつてと比べれば遥かにささやかながらも、外ならぬその総力戦と言う魔手に、手を伸ばそうとしているのではないのか? 負ければ即、滅亡なのだ。そして、国家の命運以前に、一体どれだけの人命が、失われる事になるのだろう。
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