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ナイト・オン・ドラグーン【32】話

[490]  Mr.MilkBoy  2006-12-21投稿
神水の塔を解放したアインとマナは様子を見に枯れた地、【水の村】まで向かった。 村の水路には再び川が怒涛のように流れていた。 村人達は何が起こったのかわからず、水路の周りに集まっていた。 ようやく、一人の村人が歓喜に叫んだ。 「水が…村に水が戻ったぞ!!」 つられてその場にいた村人達も喜びの声を挙げた。川に飛び込み、子供のようにはしゃいでいる者もいれば、手を取り合い嬉し泣きする者もいた。あれほど無気力な村人達が声を立てて笑っていた。 アインとマナは後方でその光景を静かに見ていた。日常の暮らしの中で当たり前のように存在している水が戻っただけで、こんなにもの人々の笑顔を見れるとは。 アインは達成感と満足感で満ち溢れていた。 自分とマナ。たった二人の力だけでこれだけの多くの人を助けることができることを。

「これで、一件落着だな…。」
アインが安堵の息を吐いた時だった。
「あなたたち、なんてことを!」
ひどく取り乱した、だが懐かしい声がした。
エリスだった。神水の塔の防衛に加勢しにきたのだろう、エリスの後ろには大勢の兵士達が控えている。
「アイン、自分が何をしたのか、わかっているのですか!?」

「エリス…。」

「あなたはその女に利用されているだけです!マナ…とか言ったわね。アインをたぶらかさないで!」

「たぶらかす?ずいぶん彼を見くびっているのですね」

「なんですって!?この女狐ッ!」
エリスの頬に朱が差す。握りしめていた拳が震えている。
「やめろ。俺はマナにそそのかされたわけじゃない」
言ったところで聞き入れてもらえるとは思っていない。ただ、エリスにはまだ別れを告げていなかった。謝罪の言葉一つ口にしないまま、逃走してきてしまったのだ。
「封印騎士団にはもう戻らない。約束…守れなくてごめん」

行こう、とマナを促して踵を返す。

「アイン…どうして…」

「さよなら、エリス」

エリスがどんな顔をしていたのか、それはわからない。
ただ、痛いほどの視線を背中に感じた。
これで、封印騎士団と自分とを繋いでいた最後の糸が切れたと、アインは思った。

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