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ナイト・オン・ドラグーン【33】話

[556]  Mr.MilkBoy  2006-12-23投稿
徒労、という言葉を何度思い知らされただろうか。古い文献を書棚に戻し、エリスはため息をついた。
書庫の中は薄暗く、カビ臭かった。

しかし、自分の探している【封印の塔】についての制度が記された書物がまったくと言っていいほど、
見当たらない。
本来ならば、世界を支える、重要な封印の塔の情報は形で残っていなければならないのにと、エリスは首を傾げた。
探し方が悪いのかもしれない。
背伸びをして、文献の背表紙をひとつひとつ確かめていてく。
なんとしてでも、封印の塔についての詳細を調べ上げねばならない。

こうして調べてみると、自分の無知を、
封印の塔や鍵についての知識のなさを痛感する。

もう少し【鍵】について知っていれば、アインを説得できた。
封印の塔について聞かれたとき、もっと詳しい話をしていれば、
アインはあんな女の口車に乗らなかったに違いないのだ。
「あの女…」
エリスは唇を噛む。
あの渓谷地帯で、アインとあの女を見たときには怒りで体が震えた。あの女だけを狙って撃ったはずなのに、
その直後、アインは谷底に飛び込んであの女を助けた…。
「マナ…、わたくしはおまえを許さない」

あの赤い瞳、魔の宿った瞳に、アインは惑わされているのだ。
なんとしてでもアインの目を覚ませなければと思う。
もちろん、
今さらアインを連れ戻したところで、守護者を死に至らしめた罪が消えるわけではないのはわかっている。
それでも、
これ以上罪を重ねるよりはいい。
このままでは、いつか自らの手でアインを討つことになるかもしれない。
そう思うと、胸の奥が痛んだ。
それをしたくなかったから、渓谷であの女を仕留めそこねた。
アインを巻き込みたくないという思いが手元を狂わせたのだ。
水の村でも、その場で二人を捕らえることができたはずだった。
なにもかも、
アインを討ちたくなかったからだ。
なのに…………

「世界を守る者として生きなさい。それは母の願いです」


不意に母の声が耳元に蘇った。
そうだった、
とエリスは自らを戒める。
世界に危機をもたらす者は誰であれ、
排除しなければならない。たとえ、
誰よりも大切に思う相手であっても。
封印騎士団の一員として世界を守ると、
あの日、

心に誓ったのだから…

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