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航宙機動部隊35

[1172]  まっかつ  2007-01-08投稿
しかし、その先はどうする?
自分は決断しなければならない。
平和か拡大か、五000万将兵に貧しいながらも安寧を与えるか、それとも彼等により多くを配分すべく、危難に満ちたゲームを命ずるか?
どちらを択ぶにしろ、以後、銀河中央域とささやかながらも接点を持つであろう帝国は、押し寄せる文明の奔流に晒されて、果たしてそれに飲み込まれずに、本質性を保つ事が出来るのか?
何よりも先進国家群や中央域人士達は、この新興勢力と遭遇した時、一体どのように受け取り、いかなる対処を探ろうとするのか?
『大本営次長殿より私信』
不意に入った通達に接し、しばし懊悩に浸っていた皇帝は、ふとそれに気付いた。
それまでにかなりの時間が経っていたかも知れない。
デスクの上に2Dホロモニターが展開し、縦四0cm?横三0cm縮尺の長方形の電光面は、今しがた退出したばかりの彼の忠臣の顔で丁度一杯になった。
『皇帝』
極簡潔にエタンは、この個人回線が正解である事を告げた。
恐らく同じレイアウトで違う肖像を眺めているであろうスコットは、敬愛すべき主君の言葉を聞いて敬礼を捧げ、
『陛下、間もなく新年ですぞ。この期間に戦闘を仕掛けて来る程、敵もやぼではありますまい。ささやかですが大本営一同、年越しの宴を用意致しました』
新年期の五日間は、人類全体の祝日、戦争ですら休止する程ある意味その習慣は徹底している。
最もこの最外縁《タルタロス》は、その常識すら通用しない暗黒世界だった訳だが、そしていまだにそうなのだがーその申し子たる無法者共をあらかた片付けて来た統合宇宙軍には、このわずかな期間だけでも、慰労を受ける資格はあっただろう。
異存のあろう筈もなく、すぐさま了承して回線を落としたエタンは、背もたれに思い切り身を押し付けて大きく伸びをして、頭の後に両腕を回して組んだ。
そして若き皇帝は、さっきとは九0度程は別の方向へ、やや軽めの思案を巡らした。
帝国にしろ統合宇宙軍にしろ、そしてこの自分ですら、これからどうなるのかは正直解らない。
しかし、少なくとも自分は、孤独とだけは無縁な様だ。
エタンはデスクの上面に埋め込まれた古風で単純なデジタル式時計に目を落とした。
帝国紀年六六年第四期第一五週六日・一三時五六分ー誤りようのない精確な表示が、大本営次長の言葉を雄弁に裏付けている。
今年も後一0時間でもう終わろうとしているのだ。

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