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MURASAME

[569]  あいじ  2007-04-10投稿
吸血鬼無想?

レイナは幸司と天馬から離れ、単身、森の中を進んでいた。周りには霧がかかっており一歩進むごとに、視界を白く染めあげるのだった。
「あの時も、こんな霧だった…」
レイナは自虐的に微笑んだ。
鮮明に蘇る過去の記憶。
レイナが霧の中で見たものは、かつての自分だったのかもしれない。

16年前…レイナ、3歳の頃だった。
この年、レイナの母は重い病によりこの世を去った。
当時、幼かったレイナはこの時のことをあまり覚えていないらしい。ただ一つ記憶にあるのは、泣いている父の姿だけだった。
そんな父子の生活に変化が起きた。ある日、父が死んだ母に瓜二つの女性を妻に迎えたのだ。
新しい母親は控えめな性格で誰からも好かれていた。連れ子だったレイナにもやさしく接した。
レイナは彼女が好きだった。
しかし、彼女には知られてはいけない秘密があった。
彼女は吸血鬼だったのだ。
だが、彼女は人を襲ったりしなかった。日光に耐性があったりと、普通の吸血鬼とは何かが違っていたのも事実だった。
レイナの父がそのことを知りながら彼女を受け入れたのか今となってはわからない。思い出せるのは、父の幸せそうな顔だけだ。
やがて、二人の間に女の子が生まれた。人と吸血鬼の間に生まれた混血児。
ソフィアと名付けられたその子は、混血児と云うことを隠されて成長した。
やさしい両親に妹…レイナはこの時がずっと続くと思っていた。

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