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航宙機動部隊第二章・2

[667]  まっかつ  2007-04-15投稿
銀河元号二一八八年・新年期第二日―\r
最外縁征討軍戦艦《サルタン=バヤズィット?》は、いざ闘いになったら前線に赴き、全軍の指揮をとる予定になっている。
よってこれと比べたら豪華客船たる《D=カーネギー》等、図体がでかいだけのただの飾りだ…三五〇万を数える機動部隊要員達は、そう思っていた。
全長二五六0M・標準排水量一G下二000万t・全備排水量は同条件下二三00万tに至る。
主砲として亜光速実弾・超加速誘導溝(SLSB・Uランチャー)を四基備え、他に一千万度級・収束プラズマ三連装砲塔六基を始めとした重武装を誇り、帝国総旗艦《スタニドルフ》より一回り小さいながらも、中央域での戦闘艦では、最強の攻撃・防御力を誇っていた。

『困りますな。不協和音の伴奏を望んでお流しになられても』
その《サルタン=バヤズィット?》を居城とする戦事総司令官・ロバート=ハートフォード大将は、戦闘艦橋の主座を陣取り、2Dホロ画像を通して、名目上の上司、ネカイア公爵クラッタ名誉元帥にクレームを入れていた。
『政治上の案件はそちらでやって頂かないと、闘う前から敵を利するばかりですぞ』
武骨にして剛直そうな、如何にも歴戦の軍人を思わせる外貌の、彼は持ち主だった。
淡い明褐色を基調に、袖口等に焦げ茶色を配した制服に身を纏っても、筋骨隆々とした肉体のラインは寧ろ強調され、角張った顔の眉と頭髪はその制服と全く同色、目は灰色をしていた。
今年で百歳になるが、この時代の基準では、まだまだ初老の域に過ぎなく、更にそれと比べても、動作・振る舞いは若々しかった。
『とにかく、たかだか四00人足らずの太子党の跋扈に我々が付き合う筋合いはございませんな。いち早く首謀者を押さえ、膺懲して頂かないと。たまには厳しい対処で臨まれたら如何です?ここは戦場ですぞ?』
通信を切って、ロバート=ハートフォードは椅子から立ち上がりながら、
『全く…実戦で死ぬのは俺達なのに、政治家共と来たら、呑気な物だ』
そう独りごちた。
ネカイア公とは不仲ではないが、人格者然とした彼のやり方に、時として優柔不断さを感じるのを否定は出来なかった。
星間諸侯として、身内をかばっているように見えてしまうのだ。
『それに…帝国は命を消耗品とみなし、死を軽んずる未知数の敵だ』
大将の心配は一つではないのだ。

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