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航宙機動部隊第二章・3

[620]  まっかつ  2007-04-17投稿
『御了承頂けますかな』
こわもてにどやされたかと思ったら、程なく生意気そうなのに突き上げられる。
当の《D=カーネギー》では、連合艦隊司令長官ネカイア公爵クラッタに気の休まる暇が無かった。
ロバート=ハートフォード大将との通信を切った途端、長官執務室を出る間もなく、いきなりの来客の相手をしなければならなくなったのだ。
彼の地位をもってしても断れる人物ではなかった。
『我が星間軌道公社としては、今度の戦役、是非とも勝って頂かなくてはならないのですよ』
司令長官のデスク向かいに立った来客は、言葉も態度も丁重では有ったが、同時にありありとした高慢さが滲み出てもいた。
だが、それも仕方ないかも知れない。
相手は星間軌道公社《URPC》から派遣された特務調査課《SID》のエージェント、才能も権限も正直星間諸侯すら歯が立たないれっきとしたユニバーサルエリート、中央域文明圏の真の支配者の一員なのだから。
『エンリケ調査官殿、我々は全力を尽していますよ』
手を示してソファーを進めながら口にした公爵の返事は、少壮の秀才を満足させるには不充分だった。
『ベストを尽せば勝てるのなら、ロケットボーラーのひとチームでも出せば片付きますな』皮肉りながら彼は、灰色の制服姿をソファーに深々と沈め、司令長官のデスクに向けて両脚を組んで見せた。
『お分かりでしょうが、あの野蛮人共に星間軌道を乗っ取られたら、どうなりますかな?』
『ああ…それは』
デスクに両肘を置いて、手を組みながら考え込むそぶりを示す老君子に
『侵略が拡がる!そうでしょう!理論的には僅か二年もあれば帝国の軍艦が全中央域まで到達しますぞ!これに各宙域でなりを潜めている狩猟・遊牧民が呼応したらどうなります!?だからこそあの共和国宙邦《グルン》ですらこんな辺鄙な所まで人員を出しているではありませんか』
自分の膝を勢い良く叩き、エンリケは遠慮なくたたみかけた。
『あ…ああ、確かに』
ネカイア公はたじろぎながら、その主張を認めるしかなかった。
『だからと言って、星間軌道を塞げば、現在の文明は維持出来なくなる。だからどんな方法を使っても勝たねばならないのですよ、我々は。それが例え、後世どんな批判を浴びようともね』
調査官の声色と表情には、ただの傲慢さだけでは説明し切れない陰影が漂っていた。

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