携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> SF >> 航宙機動部隊第二章・16

航宙機動部隊第二章・16

[471]  まっかつ  2007-05-01投稿
リク=ウル=カルンダハラが連れて行かれたのは、監獄でも取調べ室でもなく、やや広めのフロアにフラットな上面の縦長シートが列を成して置かれた、割と閑散とした場所だった。
士官用の休憩所らしい。
到着するや否や、ムハマド=ハザイは手を掲げて憲兵二人を下がらせた。
『あ、あの…自分はどうなるのでしょうか』
虎口を脱した様にも見えるが、代わりに鷲の爪に掴まれて巣へと連れ込まれただけかも知れない。
どれだけ理由が有っても、四人と銃火を交え、その内三人までをも死に至らしめているのだから。
正当防衛なのは間違いないだろう。
だが、その番人たる船内警備自体があの有り様ではないか。
今ここにいる大佐にしても、さっきの連中よりは信用出来そうだが、僅かの間に常識だの価値体系だのが散々蹂躙に晒され、そのショックを処理し切れそうにない少年が疑心暗鬼に陥ったとしても、あながち不自然ではなかった。
『隊内司法によって事案化される』
ハザイは座る様子は見せずに、簡潔に答えた。
リクは彼と正対するシートに腰を下ろした。
その方がまだしも落ち着きそうに思えた。
『憲兵が、ですか?』
『君は軍人だろう?』
『はい…』
大佐は壁際の自販機に行き、アイスコーヒーで満たされた紙カップを二つ持って来て、リクに一つ渡した。
『まあ、飲みたまえ』
『すみません』
コーヒーを二口程飲んで少し落ち着いた観戦武官は、より本質的な事を尋ねた。
『私の身柄は?被疑者として扱われるのですか?』
『いや。調査上必要があれば後々証言してもらう事も有るだろうが、その時はこちらから連絡させて貰うよ。それに最悪、君が検挙される事態になっても、拘束は出来ない。君は外交官も兼ねているからな』
相変わらずの立ち姿勢で説明するハザイと言う人は、どうやら敵ではないみたいだ。
かれはコーヒーの残り半分を一気に飲み干すと、紙コップを握り潰しながら、
『それでは私はもう行くよ。この手のテロは他にも起こり兼ねない状態だからね』
『お陰で助かりました。感謝します』
リクは立ち上がって敬礼した。
『礼には及ばん…太子党の猖獗を快く思わない者は、別に君だけじゃない。だが、次からは責任ある身分に相応しい行動を心掛けたまえ』
そう言いながら、空コップをゴミ箱に捨て、大佐は立ち去って行った。

感想

感想はありません。

「 まっかつ 」の携帯小説

SFの新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス