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航宙機動部隊第二章・24

[605]  まっかつ  2007-05-09投稿
『だからって、今!無理して行く事も無いだろ!』
ついつい大きな声を張り上げてしまい、観戦武官は半ば、ばつのわるさに目を反らした
すると、少女は意外な言葉を口にした。
『…今だからこそよ?』
『…えっ?』
思わずきょとんとして、再び向けられた漆黒の目からは何時もの毒気に満ちた光がすっかり抜かれてしまっていた。
それに正対してテンペ=ホイフェ=クダグニンは説明を始めた。
『今だからこそ、私が役立つ事が出来るのよ。軍事や政治・経済ですら私は貴方や他の要人達には敵わないでしょ?でも、今なら、否、今だからこそ!私じゃないと出来ない事が用意されていると思うの。そうでなかったら、わざわざ最外縁まで来た意味が無いじゃない?』
リク=ウル=カルンダハラはまた目を池にやり、腕を組みながら苛立たし気な溜め息を洩らし、そのまま黙りこくってしまった。
『それに、私自身の興味もあるし…国益にも充分そう筈。貴方を失望させたりしないわ。だからお願い、行かせて!』
観戦武官は手を合わしてそう頼み込む同胞に、ようやく調子を取り戻した表情でしばらく尖鋭的な眼差しを浴びせたが、直ぐにうつ向き加減になってしまった。
『…それを止める権限は、俺には無いんだろ?』
指揮系統では寧ろリクの方がこの少女の勧告・監視に従わなければならない立場だったのだ。
『だったら、俺がどうこうしろとは言えない』
ふてくされながらの同意に国家監察官の麗貌が驚喜に輝いた。
そして、少年の顔は戸惑いと予期せる不安に少なからず歪んだ。
『やったー!流石はリク!話が分かるっ!もうっ!大好きっ!』
『うぁぁぁぁぁっ!止めろ!痛い…痛いって!離れろ…ってか放せ!』
自分より高い背丈と、伯仲する腕力に抱きつかれ、軽く三分間は振り回された観戦武官は、何かの事件に遭った直後みたいになってしまい、気付けば霞み勝ちの視界を、ようやくにして彼を解放した当の少女が弾丸と化して母屋へと走って行くのを放心状態で眺めていた。
『降りたらお土産勝って来るからねー!』
『…遠足(レジャー)に…行くんじゃ無いんだぞ!』
はしゃぎ回りながら敷居を跨ぐ相方の後姿がかけて来た緊迫感を超越しきった台詞に、リクは渾身からの怒りに満ちた突っ込みをして、握る拳を震わせた。

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