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航宙機動部隊第二章・27

[468]  まっかつ  2007-05-15投稿
立場上当然、星邦議長の宙際政治構想の概略をあらかじめ伝えられていたパレオス官界トップがそれが誰を指すのかについて今更無知な分けも無かった。
『…それに、先立って連合艦隊司令長官殿と話し合いの場を設け、太子党の事についてなにがしかの言質を得るよう努めよう。最も、こちらの土産は風呂敷だけになるかも知れないがな。嘘はつきたくないのでね』
これがグイッチャルディーニ氏が約束出来る限界なのだ。
ヴェリーニ氏の光像はその濃淡や陰影模様で実に複雑な賛意を見事に現して見せた。
『所で私が帰ったら議会に出す法案群の用意はもう出来たかね?』
ある意味こちらの方が本題ではあった。
これまで対外的には実質非武装でやって来た同国が、侵略に備える為には幾つもの臨時法規や政令を作ってかなり大幅な改革を遂行しなければならないのは焦眉の急となっていたのだ。
『はい。後は閣下のサインを頂き提出を待つだけです』
そして、保守派を懐柔し、反対派を説得し、急進派を押さえながらそれだけの仕事を成し遂げれるのは、やはり今ここにいるグイッチャルディーニ氏を置いて他にはいない筈なのだ。
首席政務官の返事を聞いて、彼は初めて信頼せる部下に微笑をたたえて頷いて見せた。
『よろしい。ではもう少し留守を頼みましたぞ』

ハードスケジュールをやりくりしながらも、議長はかなりの時間を割いて、連合艦隊司令長官ネカイア公爵クラッタ名誉元師に面会を申し込んだ。
純軍事的な実務はロバート=ハートフォード戦事総司令官に委せ切りとは言え、その分を政治外交面の仕事が補って余りあるのが実情だったから、多忙はお互い様ではあったが、時期と相手の組み合わせが全ての言い訳を粉砕し、議長が即時快諾を得るのに苦労はしなかった。
しかし、それが満足の行く結果に繋がる何の前約束でも無かった事を、改めてグイッチャルディーニ氏は思い知らされたのだ。
『その様な事実は…ございません』
大理石の柱並ぶ古・地球時代・地中海世界風の公爵第邸は遍在型人工ソーラをたっぷり浴びて白亜に照り輝き、中庭に佇む星間諸侯の大人の纏う天然絹糸製のローブは宝石の様な紫色を放っていたが、対照的にその主人の言葉や相貌は生気なき曇り空に厚く覆われたままだった。
『太子党達の行いに多少の厚顔さ・奇矯さがあるのは認めましょう』

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