携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> SF >> 航宙機動部隊第二章・29

航宙機動部隊第二章・29

[467]  まっかつ  2007-05-16投稿
帝国の決戦案大綱の策定は難渋を極めた。
限り有る戦力で無尽蔵の増援を当て込める敵を屈服させる為には、ただ一回の戦闘でその主力艦隊に壊滅的な打撃を与える他に手は無いのだ。
完勝以外には認められず、さもなくばいかなる結果であっても物量作戦の前に遅かれ早かれ潰される運命は目に見えている。
この非情なる命題を解くべく、当然大本営はクレオン=パーセフォン始め最高の頭脳陣を配したのだが、彼等を以てしても少なからぬ遅滞は免れなかった。
それでもどうにか新年期第四日・二0時には原案は完成したのだ。
だがその内容は、とんでもない所の話ではなかったから、責任者たる左総長は、自分の労苦と重圧が将来に向かって寧ろ加算されるのは構造的に不可抗力だと諦める外無かった。

大本営右総長レイモンド=フォア=ギニエールはこの年四八才。
編成された艦隊を預かり演習・戦闘・運用等に当たる作戦部の主だ。
一度指揮すべき集団を持てば、彼は果断な采配振りで数々の戦績を挙げ、帝国の軍事的強勢を華々しく彩って来た。
同軍の諸宙将中戦歴・手腕・器量に置いて他の追随を許さないのは言うまでもない。
序列上、皇帝・次長・左総長に続く第四位に甘んずる形になってはいるが、時に権謀家と見なされる傾向のあるクレオンと比べると将兵達の人望は圧倒的で、また本人も比類無き忠誠心を以てこれまでの人生の全てを統合宇宙軍に捧げて来た事から、エタンやスコットの信頼も絶大な物が有った。
元々が軍事司令官職であり、しかも継承のルールが能力のみと言うこの国の皇位の、だから彼は実質的な有力候補であった。
それも限りなく一番に近い立場に在ったのだ。
軍人らしい引き締まった筋肉質の股体に、宇宙線焼けで全身黒紫気味に変色した特徴的な肌を持つ男だった。
頭髪及び眉目は全て黒だったが、これも職業病みたいなもので、昔の写真を見ると元々は金髪に淡い褐色の瞳だったらしい。
目付きは刺す様に鋭く、実に攻撃的な顔付きをしていて、同僚や部下達によって良く鷲に例えられている。
荒くれ揃いの最外縁でこの評価だから、中央域に代表される文明世界の人士が見たら、果たして彼の容貌は一体どんな印象を与えただろう。
しかし、戦闘時を除けば、彼は意外なまでに保守的な見識の持主で、狂暴さだけで成り上がった男ではない事を証明していた。

感想

感想はありません。

「 まっかつ 」の携帯小説

SFの新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス