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航宙機動部隊第二章・44

[457]  まっかつ  2007-06-01投稿
『歴史上、実現が理論に先行した故事は枚挙に暇ないし、同じく行動が常識を打破した話も決して珍しく無い―問題はそれを誰が成し遂げたかであって、一端証明を得たら、内容如何に関わらずそれが新しいスタンダードと化す―そうだろ?』
『ううん…だが、一つの成功は、無数の失敗の積み重ねの上に成り立つ物だからなあ』
リクはまだ承服し切れないでいた。
『英雄を望む者・偉人と思い込む者は幾等でも居るが、本当に歴史に名を残せる奴は、ほんの一握りだぜ?』
そう釘を刺しながらも、親切にもカイシャンが手際良く整理して送信してくれた参考資料が次々と画像に提示され、それを吟味すればする程、リクは戦友の判断と考察を笑い飛ばす分けには行かないだけの理がその中に有ることを認めざるをえなくなりつつあった。
『標準偏差・確率分布…こいつは、一三000隻を飛ばしても、まともに会戦するよりリスクは少ないのか?たまげたなあ、こいつは…』
飽くまでも仮定だったが、厳密な演算を執拗に繰り返したこれが結果なのだ。
その内容の余りの奇天烈振りにリク=ウル=カルンダハラは、しばし絶句する他無かった。
『だから【コロンブスの卵】な分けさ。誰もやらない、やりたがらない。だが、一定以上の望みは有る。しかもその勝算は人知次第でより確実にする事も出来る―大昔の戦略家はこう喝破した【一流の将帥は、端から見れば誰でも出来そうな位当たり前の勝ち方しかしない物だ、何故なら戦う前から勝てる状況を造るべく準備と計量に全力を尽すからだ―】』
『お前が帝国の人間じゃなくて良かったよ。さもなくば俺はもう、ここから生きて帰れなかっただろうからな』
ここまで来ると、賞賛や感謝を通り越して、一種のブラックユーモアを刺激される物だ。
ひねくれた礼の仕方で通信を閉じたリクは、そのまま畳の上に仰向けに寝転んだ。
『零距離奇襲攻撃…か』
見方を変えれば、それは最外縁征討軍が抵抗出来ずに壊滅するただ一つのシチュエーションと考えて良かった。
そのアイデアは時を経る毎に、少年の心を危機感に満ちた興奮で埋め尽して行ったが、まとまった形に再構成する試みを、またやって来た睡魔が断絶させた。
そして、彼が眠りに落ちた事によって、この予測が活かされる機会は永遠に失われてしまうのだった。

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