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MURASAME

[517]  あいじ  2007-07-10投稿
ぬえ?

竜助が本部を出るともう辺りは暗くなっていた。熱風とも思える夏の風が彼の体を通り抜ける。
例え、太陽の光届かぬ夜でもその暑さは遺憾なく発揮され、帝都東京を猛暑へと誘っていた。
竜助はオートバイにまたがると熱風を切り裂くように走り始めた。
(さて…どうしようか…そうそう簡単に出くわすものでもないし…)
思案の末、今日は帰路に着くことにしたらしい。彼は速度を上げると郊外の自宅へ走った。

しばらく走ると奇妙な気配を後ろに感じた。誰かに尾行されているらしい。竜助はバイクの速度を上げ、尾行者をまこうとした。
しかし、バイクの速度に合わせるように尾行者の気配も強くなった。
(…意外と簡単に出くわしたかな…まぁ僕としては都合がいいか…)
竜助はバイクを止め、後ろを見据えた。彼の背後には暗い闇が広がるばかりだった。彼は腰の清姫を組み立て、闇の中を一突きした。
闇から悲鳴にも似た雄叫びが上がり、尾行者が姿を現した。
まさにぬえだった。伝説や説話で聞くものと違い、何が合わさったのか解らないが正体不明を表すにはうってつけの名前だった。
「まさか、本当に出くわすとは…」
竜助は半ば呆れながら呟いた。ぬえは怒りの鳴き声を発しながら、巨大な前足を竜助に叩きつけた。竜助はその剛腕をかわし、清姫をぬえに突いた。
だが、ぬえの体は鋼のように固く、清姫の刃を弾いた。
ぬえは竜助に向かってまるで暴れるようにその剛腕をがむしゃらに振り回した。竜助は飛ぶようにそれをかわし、清姫の刃を突き続けた。
「チッ…なんて体だ…だったら」
竜助は弦を弾くように身を仰け反らせ、清姫の刃の先をぬえに合わせた。
「ふん!」
竜助は気合いの声と共に、清姫をぬえの目に突き立てた。ぬえは絶叫を上げ、その目からどす黒い血が流れた。
「蛇貫転!」
竜助は清姫を回転させ、ぬえの体を吹き飛ばした。

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