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航宙機動部隊第三章・29

[452]  まっかつ  2007-07-15投稿
『わかるだろ?出向社員さ。どこから来たのかは定かじゃないが、かなり大きい所らしい』
アイスコーヒーを口にしながら、イェンセは知る限りを皮肉を交えて説明した。
『…何時からよ?』
『あのテロがあって直ぐだったな、あいつが来たのは…まるで申し合わせたかの様な手際の良さだった。君が知らないのも無理は無いな。その間ずっと外回りしていてろくに連絡は取っていないんだから』
『でもこんな…おかし過ぎるわ!まるでどこかに買収されたみたいじゃない!やり方は滅茶苦茶になってるし、変な奴は来るし!』
敏腕記者は見る見る眉間に亀裂を走らせた。
自分の居場所自体が、ドキュメント取材すべき格好の題材となってしまっているではないか。
燈台もと暗しだが、幾ら所要経費が限りなくゼロに近く済みそうだからとて、とても喜ぶ心境になれる物ではなかった。
『だから―僕に訊かれても分からないよ。どうしても知りたければ、誰か上役を捕まえるしかないね』
肩をすくめたイェンセの左手に、空になったセルカップがねじ込まれた。
『言われなくてもそうするわ!』
ブロンドの背中はそう言い残すと、息みながら歩み去って行った。

同社人権・社会部長・アンドレア=ティレ=ロッツイの遮音ガラスで仕切られた専用ブースの扉が乱暴に開けられたのは、それから僅か三分後の事だった。
近くのファースト・フードチェーンから仕入れたスープパスタセットと言う遅過ぎる昼食を予告もなく中断されて、部長は麺を運んだ口にフォークを突っ込んだままのかなり間抜けた体勢で、
『や…ジョヴァンナ=バウセメロ君…帰って来たのかね』
慌てたままで挨拶する他は無かった。
『帰って来ましたよ、次いでに抗議しに来たんです!』
トマトスープの香気に満ちた湯気を浴びながら、奇襲の主に容赦は無かった。
『私の企画が踏み躙られ、しかも内規を無視した偏向報道・煽り合い!何時から我が社はタブロイド配信業者に成り下がったのです!?否、今回はそのタブロイドですら進んで自粛に参加し、商業利益よりも星民への正確な判断材料の提供に励んでいると言うのに!』
アンドレア=ティレ=ロッツイは取り敢えずフォークをセル皿に戻し、おしぼりで口元を拭きながら、多機能標示眼鏡をかけた。
『や…君の言いたい事は分かる。分かるんだよ…』

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